第10章 感情と動機付け

図10.1 | 感情は、特に予期せぬ出来事に対して、一瞬にして変化します。2013年4月15日に発生したボストンマラソンの爆破事件の直後では、人々が即座に経験した感情のいくつかは、驚き、恐怖、怒り、および悲しみでした。感情とは何でしょうか?何がそれを引き起こすのでしょうか?一部の人々が安全な場所に逃げた一方で、他の見物人がすぐに人を助けようとしたのは何に動機付けられていたのでしょうか?(credit: modification of work by Aaron “tango” Tang)

この章の概要

10.1 動機付け
10.2 空腹と食事
10.3 性行動
10.4 感情

はじめに

私たちは、何によって、実際に行っているように行動するのでしょうか?何が私たちを食事へと駆り立てるのでしょうか?何が私たちを性交へと駆り立てるのでしょうか?私たちが経験する感情を説明するような、生物学的な根拠があるのでしょうか?感情はどれほど普遍的なものなのでしょうか?

この章では、私たちは、動機付けと感情の両方に関する問題を探っていきます。まず最初に、私たちは動機付けや、ある行動をとる理由を説明するために提唱されているいくつかの理論についての議論から始めます。あなたはまた、人間のいくつかの行動を駆り立てる生理学的欲求や、行動に影響を与える社会的経験の重要性についても学ぶことになります。

次に、私たちは動機付けられた行動の例として、食事と性交について考えます。空腹と満腹の生理学的なメカニズムは何でしょうか?肥満が起こる理由について科学者が有している理解とは何でしょうか?また、肥満や摂食障害にはどのような治療法があるのでしょうか?人間の性交とセクシュアリティーに関する研究は、過去1世紀の間にどのように発展してきたのでしょうか?心理学者は、性的指向や性同一性という人間の経験をどのように理解し、研究しているのでしょうか?このような疑問や、さらに多くのことを探求していきます。

本章の最後は、感情についての議論で締めくくります。あなたは、感情がどのように発生するかを説明するために提案されたいくつかの理論、感情の生物学的裏付け、そして感情の普遍性について学びます。

10.1 動機付け

学習目標

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:

  • 内発的動機付けと外発的動機付けを定義する
  • 動機付けの理論として、本能、動因低減、自己効力感、および社会的動機が提案されていることを理解する
  • マズローの欲求の階層に関連する基本的な概念を説明する

私たちはなぜ、実際に私たちがやっているようにして物事をやるのでしょうか?私たちの行動の根底には、どのような動機付けがあるのでしょうか?動機付けとは、目標に向かって行動を導くような欲求や必要性のことを記述します。動機付けには、生物学的な動機のほかに、内発的なもの(内的要因から生じるもの)と外発的なもの(外的要因から生じるもの)があります(図10.2)。内発的に動機付けられた行動は、それがもたらす個人的な満足感のために行われます。一方で、外発的に動機付けられた行動は、他者から何かを受け取るために行われます。

図10.2 | 内発的動機付けは個人の内部からもたらされる一方で、外発的動機付けは個人の外部からもたらされます。

あなたが今、大学にいる理由を考えてみてください。あなたは学ぶことを楽しんでいて、自分自身をより豊かな個人とするような教育を追求したいと望んだためにここにいるのでしょうか?もしそうであれば、あなたは内発的に動機付けられています。しかしながら、もしあなたが高報酬のキャリアへ向けて自分自身をよりよく売り出すために、あるいは親の要求を満たすために、大学の学位を取得したいという理由でここにいるのだとしたら、あなたの動機付けは本質においてより外発的なものです。

実際には、私たちの動機付けは、しばしば内発的要因と外発的要因の両方が組み合わさったものですが、これらの要因の組み合わせの性質は、時間の経過とともに変化することがあります(多くの場合、直観に反するように見える形で)。「あなたが好きな仕事を選べば、一生のうちに一日たりとも働かずに済む」という古い格言があります。つまり、もしあなたが自分の職業を楽しんでいるならば、仕事は……まあ、仕事のようには見えないということです。しかし、必ずしもそうではないことを示唆する研究もいくつかあります(Daniel & Esser, 1980; Deci, 1972; Deci, Koestner, & Ryan, 1999)。この研究によると、私たちが楽しんでいるような行動をすることで、何らかの外発的強化を受け取る(すなわち、お金をもらう)と、それらの行動が仕事だと思われるようになり、同じ楽しさを得られなくなってしまいます。その結果、外発的強化がない場合には、私たちがそれらの再分類された行動に従事する時間が減ることがあります。たとえば、オデッサはお菓子作りが大好きなので、空いた時間には気晴らしのためにお菓子作りをしています。食料品店の仕事で棚の陳列をした後、夕方に生地をこねることもよくありますが、それも彼女がお菓子作りを楽しんでいるためです。その店内の製菓部門の同僚が退職したとき、オデッサは彼の持ち場に応募し、製菓部門に異動することになりました。彼女は新しい仕事でやることを楽しんでいましたが、数か月後には、自由な時間においしいおやつを作りたいとはあまり思わなくなっていました。お菓子作りは仕事となり、彼女がそれを行う動機付けを変えてしまいました(図10.3)。オデッサが経験したことは、過剰正当化効果と呼ばれています(外発的動機付けが与えられると内発的動機付けが低下します)。これは、内発的動機付けを消滅させ、継続的な成果のために外発的な報酬に依存するようになるかもしれません(Deci et al., 1999)。

図10.3 | 研究では、ケーキのアイシングのように私たちが好んでやっていることが仕事になると、それに対する内発的動機付けと外発的動機付けが変化することがあると示唆されています。(credit: Agustín Ruiz)

他の研究では、内発的動機付けは外発的強化の影響をそれほど受けやすくはないかもしれず、それどころか、言葉で褒めるなどの強化が実際には内発的動機付けを高めるかもしれないと示唆されています(Arnold, 1976; Cameron & Pierce, 1994)。その場合、オデッサが空いた時間にお菓子を作る動機付けは、たとえば、お客さんが定期的に彼女のお菓子作りやケーキデコレーションの技術を褒めてくれれば、高く保たれるかもしれません。

研究者たちの研究結果におけるこのような見た目の上での矛盾は、いくつかの要因を考慮することによって理解できるかもしれません。1つは、金銭などの物理的強化と、褒め言葉などの言語的強化では、個人への影響の仕方が大きく異なる可能性があります。実際、有形の報酬(つまり、お金)は、無形の報酬(つまり、褒め言葉)よりも内発的動機付けに悪影響を及ぼす傾向があります。さらに、個人が外発的動機付けを期待しているかどうかも極めて重要です:もしその人が外発的な報酬を受け取ることを期待している場合は、課題に対する内発的動機付けが低下する傾向があります。しかしながら、そのような期待がなく、外発的動機付けがサプライズとして提示された場合には、課題に対する内発的動機付けが持続する傾向があります(Deci et al., 1999)。

さらに、文化も動機付けに影響を与えることがあります。たとえば、集団主義的な文化では、家族のためにいろいろな物事を行うことが一般的です。なぜなら、誰か1人の個人にとって最善なことではなく、集団と集団全体にとっての最善なことが重視されるからです(Nisbett, Peng, Choi, & Norenzayan, 2001)。このように他者に焦点を当てることで、行動に対する状況的・文化的影響の両方を考慮した、より広い視点を得ることができます。そのため、他者の行動の原因について、より繊細な説明ができるようになります。(あなたは、社会心理学を学ぶ際に、集団主義的な文化と個人主義的な文化について、さらに詳しく学ぶことになるでしょう。)

教育現場では、生徒が教室に対する帰属感と尊敬の念を感じているときに、学習に対する内発的な動機付けを経験しやすくなります。もし教室での評価的な側面が強調されず、生徒が学習環境をいくらか制御していると感じられれば、内面化は高まります。さらに、挑戦的でありながらも実行可能な活動を学生に提供し、さまざまな学習活動に取り組むための根拠を示すことで、それらの課題に対する内発的動機付けを高めることができます(Niemiec & Ryan, 2009)。法科大学院の1年生であるハキムは、今学期に2つのコースを履修しています:それは家族法と刑法です。家族法の教授は、かなり威圧的な教室を持っています:彼は学生に厳しい質問をして困らせるのが好きなので、学生はしばしば侮辱されたり、恥をかかされたりしたように感じます。成績は小テストと試験のみに基づいており、この指導者は毎回のテストの結果を教室のドアに貼り付けます。対照的に、刑法の教授は教室での議論や小グループでの礼儀正しい討論を促します。コースの成績の大部分は試験に基づくものではなく、学生が選んだ犯罪問題に関する学生設計型の研究プロジェクトが中心となります。研究では、ハキムは家族法のコースでは内発的な動機付けが低くなるであろうことが示唆されています。そこでは、教室において学生が威圧感を感じ、教師主導の評価が重視されています。一方、ハキムは、刑法のコースでより高いレベルの内発的動機付けを経験する可能性があります。そこでは、教室において包摂的な協調や複数の考え方の尊重が奨励され、学生が自分の学習活動により大きな影響力を持つことができます。

動機付けについてのいくつかの理論

ウィリアム・ジェームズ(1842-1910)は、動機付けに関する初期の研究に重要な貢献をした人物であり、彼はしばしば米国における心理学の父と呼ばれています。ジェームズは、生存を助けるいくつかの本能によって行動が引き起こされると理論化しました(図10.4)。生物学的な視点からは、本能とは、生物種に固有の学習されない行動パターンのことです。しかしながら、本能の正確な定義をめぐっては、ジェームズとその同時代の人々の間でかなりの論争がありました。ジェームズは人間の特別な本能を数十個提案しましたが、同時代の多くの人々は独自のリストを持っており、それらは異なっていました。赤ん坊を守る母親の行動や、砂糖をなめたいという衝動、獲物を狩ることなどが、ジェームズの時代に真の本能として提唱された行動です。この見解(人間の行動は本能によって引き起こされる)はかなりの批判を受けました。なぜなら、人間のあらゆる種類の行動を形成する際において、学習が否定しようのない役割を持っているからです。実際、はやくも1900年代には、いくつかの本能的な行動は、連合学習の結果であることが実験的に示されていました(ワトソンが「アルバート坊や」に恐怖反応を条件付けしたことについてあなたが学んだときのことを思い出してください)(Faris, 1921)。

図10.4 | (a)ウィリアム・ジェームズは、行動が本能によって引き起こされると主張し、動機付けについての本能理論を提唱しました。(b)人間の場合、本能には、乳児が乳首を哺乳し吸うなどの行動が含まれることがあります。(credit b: modification of work by “Mothering Touch”/Flickr)

もう1つの初期の動機付け理論は、恒常性の維持が行動の指示において特に重要であると提唱しました。あなたが以前読んだことから、恒常性とは、生物学的な系の中のバランス、つまり最適なレベルを維持しようとする傾向であることを思い出せるでしょう。身体の系の中では、制御中枢(多くの場合、脳の一部)が受容体(多くの場合、ニューロンの複合体)からの入力を受け取ります。制御中枢は、エフェクター(他のニューロンのことがあります)に対して、制御中枢が検出したバランスの崩れを修正するよう指示します。

動機付けについての動因理論によれば、恒常性からの逸脱が生理学的欲求を生じさせます。それらの欲求は、心理的動因の状態を生じさせ、それによって欲求を満たすために行動が導かれ、最終的に系を恒常性に戻すことができます。たとえば、もし食事をしてから長い時間がたつと、あなたの血糖値が正常値よりも下がります。この低血糖により、生理学的な欲求とそれに対応する動因状態(つまり、空腹感)が誘発され、それが食べ物を探して摂取するようにあなたを導きます(図10.5)。食べることで空腹感が解消され、最終的にはあなたの血糖値が正常に戻ります。興味深いことに、動因理論では、私たちが行う行動反応の種類に習慣が果たす役割も強調されています。習慣とは、私たちが定期的に行っている行動パターンのことです。ひとたび私たちが動因をうまく抑えるような行動をとると、今後、その動因に直面したときには、その行動をとる可能性が高くなります(Graham & Weiner, 1996)。

図10.5 | 空腹とそれに続く食事は、恒常性を維持する複雑な生理学的プロセスの結果です。(credit “left”: modification of work by “Gracie and Viv”/Flickr; credit “center”: modification of work by Steven Depolo; credit “right”: modification of work by Monica Renata)

動因理論の拡張版では、潜在的な動機付けとして覚醒レベルが考慮されています。あなたが学習について学んだことから思い出せるように、この理論では、人間には最適な覚醒レベルがあり、私たちはそれを維持しようとする、ということを主張しています(図10.6)。もし私たちの覚醒度が低いと退屈してしまい、何らかの刺激を求めてしまいます。一方、もし私たちが過剰な覚醒状態になると、覚醒度を下げるための行動をとるようになるでしょう(Berlyne, 1960)。ほとんどの学生は、学業の過程で、最適なレベルの覚醒状態を維持する必要性を経験しています。春学期の終わり頃、学生がどれほどのストレスを経験するか考えてみてください。彼らは永遠に続くかのように見える試験や論文、時間内に完成させなければならない重要な課題に圧倒されています。彼らは、長い夏休みの間に自分たちを待ち受ける、休息と気晴らしを渇望していることでしょう。しかしながら、ひとたび学期を終えると、彼らが退屈を感じ始めるまでにそれほど時間はかかりません。たいていの場合、秋に次の学期が始まる頃までには、多くの学生は学校に戻れることを喜んでいます。これは、覚醒理論がどのように働くかについての一例です。

図10.6 | ここには、課題の成果に関連した最適な覚醒という概念が描かれています。成果は、最適な覚醒レベルで最大となり、覚醒不足と覚醒過剰では徐々に減ります。

では、最適な覚醒レベルとは何でしょうか?どのくらいのレベルが最高の成果につながるのでしょうか?研究では、一般的にはほどほどの覚醒が最適であり、覚醒度が非常に高かったり低かったりすると、成果が低下する傾向があると示されています(Yerkes & Dodson, 1908)。この授業の試験を受けるときのあなたの覚醒レベルを考えてみてください。たとえば、退屈や無気力のように、あなたのレベルが非常に低ければ、あなたの成果は低下するでしょう。同様に、極度の不安のような非常に高いレベルであれば、固まってしまい、成果が妨げられるでしょう。また、あるソフトボールチームがトーナメントに参加する場合の例を考えてみましょう。彼らは初戦は大差で勝てると予想されているので、覚醒レベルが低いまま試合に臨み、実力の劣るチームに負けてしまいました。

しかし、常に中間のレベルが最高であるという単純な答えではなく、最適な覚醒レベルはもっと複雑なものです。研究者のロバート・ヤーキースとジョン・ドッドソンは、最適な覚醒レベルが、実行する課題の複雑さと難しさに依存することを発見しました(図10.7)。この関係は、ヤーキース-ドッドソンの法則として知られています。これは、覚醒レベルが比較的高いときには単純な課題が最もよく実行され、覚醒レベルが低いときには複雑な課題が最もよく実行されるというものです。

図10.7 | 覚醒レベルが中間の範囲にあるときに課題の成果が最もよくなり、難しい課題は覚醒レベルが低いときに、単純な課題は覚醒レベルが高いときに最もよく実行されます。

自己効力感と社会的動機

自己効力感とは、ある課題を完了するための自分の能力に対する個人の信念であり、過去に同じ課題や類似した課題を成功させた経験が含まれることがあります。アルバート・バンデューラ(Bandura, 1994)は、個人の自己効力感が行動の動機付けに重要な役割を果たすと理論化しました。バンデューラは、動機付けが、自分の行動の結果について私たちが持つ期待に由来するものであり、究極的には、ある行動を行う能力に対する評価が、自分の行動や自分のために設定する将来の目標を決定すると主張しています。たとえば、もしあなたが自分は最高レベルの成果を上げる能力を持っていると心から信じているならば、あなたは困難な課題に挑戦し、挫折に負けずに課題を最後までやり遂げることができる可能性がより高くなります。

多くの理論家が、社会的動機の理解に焦点を当てて研究を行っています(McAdams & Constantian, 1983; McClelland & Liberman, 1949; Murray et al., 1938)。彼らが記述している動機としては、達成のための欲求、所属のための欲求、および親密さのための欲求などが挙げられます。達成のための欲求は、功績や成果へと駆り立てるものです。所属のための欲求は、他者との積極的な交流を促し、親密さのための欲求によって、私たちは深く意味のある関係を求めるようになります。ヘンリー・マレーら(Murray et al., 1938)は、これらの欲求をいくつかの領域へと分類しました。たとえば、達成感や認められたいという欲求は、野心という領域に該当します。また、支配や攻撃性は人間の力という領域のもとにある欲求として認識され、遊びは個人間の愛情という領域の中の欲求として認識されました。

マズローの欲求の階層

先に述べた動機付けについてのいくつかの理論は、基本的な生物学的動因、個人の特性、あるいは社会的文脈に関するものですが、アブラハム・マズロー(Maslow, 1943)は、生物学的なものから個人的なもの、そして社会的なものに至るまでの動機のスペクトラムに広がる欲求の階層を提案しました。これらの欲求は、しばしばピラミッド型として描かれます(図10.8)。

図10.8 | これは、マズローの欲求の階層を図示したものです。ピラミッドの一部のバージョンでは、承認と自己実現の間に、認知的欲求と美的欲求も含まれています。また、ピラミッドの最上部に自己超越のための別の階層を設けるものもあります。

ピラミッドの底辺には、生存のために必要なすべての生理学的欲求があります。続いて、安心と安全についての基本的欲求、愛されたい・所属の感覚を持ちたいという欲求、そして自尊心や自信を持ちたいという欲求があります。ピラミッドの最上位は自己実現であり、これは本質的に自分の可能性を最大限に発揮することと同等の欲求であり、ピラミッドの下位の欲求が満たされて初めて実現されるものです。マズローや人間主義の理論家にとって、自己実現は、人間主義における人間性の肯定的な側面の強調を反映しています。マズローは、これは継続的で生涯にわたるプロセスであり、実際に自己実現状態を達成する人はごく一部であることを示唆しました(Francis & Kritsonis, 2006; Maslow, 1943)。

マズロー(Maslow, 1943)によると、人はピラミッドの上位に位置する欲求に取り組む前に、下位の欲求を満たさなければなりません。そのため、たとえば、もしある人が栄養の要件を満たすために十分な食糧を手に入れるのに苦労しているならば、その人が他人から良い人だと見られているかどうかを考えるのに膨大な時間を費やすことはまずありません。むしろ、その人は食べるものを探すことに全力を注ぐでしょう。しかしながら、マズローの理論は主観的であり、現実世界で起こる現象を説明できないと批判されているということは指摘されてしかるべきです(Leonard, 1982)。また、より最近では、マズローが人生の後半において、自己実現の上位に、自分の関心事を超えた意味と目的のための努力を表す自己超越のレベルを提唱したことを取り上げた研究もあります(Koltko-Rivera, 2006)。たとえば、人々は時に、政治的な主張をするために、あるいは他者の状況を改善するのを試みるために自己犠牲を払うことがあります。非暴力の抗議を通じて独立を唱えた世界的に有名なモハンダス・K・ガンジーは、ある特定の状況に抗議するために何度かハンガーストライキを行いました。人々は、自分自身の欲求を超えた高次の動機によって、自らを飢えさせたり、危険にさらしたりすることがあります。

学習へのリンク

マズローの欲求の階層(http://openstax.org/l/hierneeds)についてのインタラクティブな設問をチェックして、さらに学んでください。

10.2 空腹と食事

学習目標

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:

  • 空腹と食事がどのように調節されているかを記述する
  • 過体重と肥満のレベルを区別し、それに伴う健康上の影響を説明する
  • 神経性無食欲症と神経性大食症がもたらす健康上の影響について説明する

食べることは生きていくために必要不可欠です。空腹のような動因が存在して、人間が確実に栄養を求めるようにするのは驚くことではありません。この章では、空腹や食事を調節する生理学的なメカニズムに主として焦点を当てますが、強力な社会的、文化的、経済的な影響も重要な役割を果たしています。この節では、空腹の調節、食事、および体重について説明するとともに、私たちは摂食障害がもたらす悪影響についても議論します。

生理学的メカニズム

空腹感の根拠となる生理学的メカニズムはいくつかあります。私たちの胃の中が空になると、胃は収縮します。すると、典型的には、人は空腹感を経験します。化学的メッセージが脳に伝わり、摂食行動を起こすためのシグナルとなります。血糖値が下がると、膵臓と肝臓は、空腹感を誘発する多くの化学的シグナルを発生させ(Konturek et al., 2003; Novin, Robinson, Culbreth, & Tordoff, 1985)、それによって摂食行動を開始させます。

ほとんどの人は、食事をすると満腹、すなわち飽満感や満足感を得て、摂食行動が止まります。摂食行動の開始と同様に、満腹感もいくつかの生理学的なメカニズムによって調節されています。血糖値が上昇すると、膵臓と肝臓は空腹感と食事を遮断するシグナルを送ります(Drazen & Woods, 2003; Druce, Small, & Bloom, 2004; Greary, 1990)。また、食物が消化管を通過する際には、脳に重要な満腹シグナルが送られ(Woods, 2004)、脂肪細胞は満腹ホルモンであるレプチンを放出します。

食べることの調節に関わるさまざまな空腹と満腹のシグナルは、脳内で統合されます。研究では、視床下部と後脳のいくつかの領域が、この統合が行われる特に重要な場所であることが示唆されています(Ahima & Antwi, 2008; Woods & D’Alessio, 2008)。究極的には、脳内の活動が摂食行動をとるかどうかを決定します(図10.9)。

図10.9 | 空腹と食事は、脳内で統合される空腹と満腹のシグナルが複雑に絡み合って調節されています。

代謝と体重

私たちの体重は、遺伝子と環境の相互作用や、私たちが摂取するカロリー数と日常の活動で燃焼するカロリー数の差など、さまざまな要因によって影響されます。もし摂取カロリーが使用カロリーを上回ると、私たちの体は余分なエネルギーを脂肪という形態で蓄えます。もし消費カロリーよりも摂取カロリーが少なければ、蓄積された脂肪がエネルギーに変換されるでしょう。私たちのエネルギー消費量は、当然ながら活動量に影響されますが、身体の代謝率も関係してきます。人間の代謝率とは、所定の時間内に消費されるエネルギー量のことです。代謝率には極めて大きな個人差があります。代謝率の高い人は、代謝率の低い人に比べて容易にカロリーを消費することができます。

私たちは誰でも時々体重の変動を経験しますが、一般的には、食生活および/または身体的な活動に極端な変化がない限り、ほとんどの人の体重の変動はわずかな範囲にとどまります。この観察から、一部の人は体重調節についての設定値理論を提唱しました。設定値理論は、それぞれの個人には変化しにくい理想的な体重(すなわち、設定値)があると主張しています。この設定値は遺伝的に決まっていて、体重を設定値から大きく動かそうとすると、エネルギー摂取量および/または消費量の補償的な変化によって抵抗されます(Speakman et al., 2011)。

この特定の理論から生み出された予測の中には、経験的に裏付けられていないものもあります。たとえば、近ごろ体重を大幅に減らした人と対照群との間では、代謝率に変化が見られませんでした(Weinsier et al., 2000)。さらに、設定値理論は、体重の調節における社会的・環境的要因の影響を説明できません(Martin-Gronert & Ozanne, 2013; Speakman et al., 2011)。このような限界があるにもかかわらず、設定値理論は、体重がどのように調節されるかを説明する、単純で直感的な説明として、今でもよく用いられています。摂食障害についての詳しい議論は、心理学的障害の章を参照してください。

肥満

ある人が、所与の身長で一般的に健康的であるとして受け入れられている体重よりも重い場合、その人は過体重または肥満と見なされます。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、ボディマス指数(BMI)が25~29.9の成人は過体重と見なされます(図10.10)。BMIが30以上の成人は、肥満と見なされます(Centers for Disease Control and Prevention [CDC], 2012)。死亡のリスクがあるほどの過体重の人は、病的肥満として分類されます。病的肥満とは、BMIが40を超えることとして定義されています。BMIは、世界保健機関(WHO)、CDC、および他の団体で健康的な体重の指標として使用されていますが、評価の道具としての価値は疑問視されている、ということに注意してください。BMIは、さまざまな人口集団の調査に最も有効です(それが、それらの機関の仕事です)。BMIは、個人を評価する際にはそれほど有用ではありません。なぜなら、身長と体重の測定では、健康レベルなどの重要な要素を考慮することができないからです。たとえば、スポーツ選手はBMIが高いことがあります。それは、このツールでは、人の体重に占める脂肪と筋肉の割合が区別されていないからです。

図10.10 | この図は、成人のBMIを算出する方法を示しています。個人は、Y軸に身長を、X軸に体重を当てはめて、BMIを決定します。

極度の過体重または肥満は、いくつかの健康上の悪影響についての危険因子となります。その悪影響には、心血管疾患、脳卒中、2型糖尿病、肝臓疾患、睡眠時無呼吸、大腸がん、乳がん、不妊症、および関節炎のリスクの高まりが含まれますが、これらに限定されるものではありません。米国では、成人人口の約3分の1が肥満であり、成人の約3分の2と子供の6人に1人が過体重であると推定されていることから(CDC, 2012)、この公衆衛生上の重要な懸念に対処する方法を解明することに大きな関心が寄せられています。

人が過体重や肥満になる原因は何でしょうか?あなたはすでに、遺伝子と環境の両方が体重を決定する重要な要因であり、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余分なエネルギーが脂肪として蓄積されることを読みました。しかしながら、社会経済的地位や物理的環境も寄与する要因として考慮されなければなりません(CDC, 2012)。たとえば、犯罪が多発している貧しい地区に住んでいる人は、徒歩や自転車で通勤したり、地元の市場に行ったりすることに抵抗を感じるかもしれません。そうすると、身体活動の量が制限され、その人は結果的に体重が増加する可能性があります。同様に、一部の人は健康的な食品を市場で購入する余裕がないかもしれませんし、あるいはそれらの選択肢が(特に都市部や貧しい地域では)利用可能でないかもしれません。そのため、主な栄養源として、利用可能で安価な、高脂肪・高カロリーのファストフードに主として頼る人もいます。

一般的に、過体重や肥満の人は、食生活と運動の両方を組み合わせて体重を減らす努力をすることが推奨されます。これらの方法で非常にうまくいく人もいますが、多くの人は体重を減らすのに苦労しています。何度も減量を試みても効果が得られない場合や、肥満が原因で死に至る危険性がある場合には、肥満治療手術が勧められることがあります。肥満治療手術は、特に体重減少を目的とした手術の一種であり、食べられる食物の量を減らしたり、消化された食物の吸収量を制限したりするために、消化器系を修正することを伴います(図10.11)(Mayo Clinic, 2013)。最近のメタ分析によると、手術直後の2年間は、手術以外の肥満治療法よりも肥満治療手術の方が効果的であることが示唆されていますが、現在までのところ、長期的な研究は存在しません(Gloy et al., 2013)。

図10.11 | 胃バンディング手術では、小さな胃の袋を作り、消化に使うことのできる胃の大きさを小さくします。

学習へのリンク

2種類の肥満治療手術について説明しているこのビデオ(http://openstax.org/l/barsurgery)を見て、さらに学んでください。

深く掘り下げてみよう

プラダー・ウィリ症候群

プラダー・ウィリ症候群(PWS)は、激しい空腹感が持続し、代謝率が低下する遺伝性疾患です。典型的には、罹患している児童は24時間体制で過食を行わないように監督しなければなりません。現在、PWSは子供の病的な肥満の主要な遺伝的原因となっており、多くの認知障害や情緒的な問題と関連しています(図10.12)。

図10.12 | この1680年の絵画に描かれているユージェニア・マルチネス・バレホは、プラダー・ウィリ症候群だったかもしれません。わずか8歳にして、彼女は体重が約120ポンド[約54キログラム]もあり、「La Monstrua(怪物)」というあだ名で呼ばれていました。

遺伝子検査を用いて診断することもできますが、PWSに関連付けられたいくつかの行動上の診断基準があります。生まれてから2歳までは、筋緊張の欠如や吸啜行動の不良がPWSの初期徴候となることがあります。発達の遅れは6歳から12歳の間に見られ、PWSに伴う過食や認知障害はもう少し後に発症します。

PWSの正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、罹患者には視床下部の異常があるという証拠があります。視床下部が空腹や食事を調節する役割を担っていることを考えると、これは驚くようなことではありません。しかしながら、この章の次の節であなたが学ぶように、視床下部は性行動の調節にも関わっています。その結果、PWSに罹患している多くの人は、青年期に性的成熟に達することができません。

現在のところ、PWSの治療法や療養法はありません。しかしながら、もし個人が体重をコントロールすることができれば、彼らの寿命は大幅に伸びます(歴史的には、PWS患者はしばしば青年期または成人期前期に死亡しました)。さまざまな向精神薬や成長ホルモンの使用法の進歩により、PWS患者の生活の質は向上し続けています(Cassidy & Driscoll, 2009; Prader-Willi Syndrome Association, 2012)。

摂食障害

米国では、成人のほぼ3人に2人が過体重に関連した問題に悩まされていますが、それよりも小さな割合の(それでもかなりの数の)人が摂食障害であり、通常の体重または低体重となっています。しばしば、これらの人々は体重が増えることを恐れています。神経性大食症や神経性無食欲症を患っている人は、多くの健康上の悪影響に直面しています(Mayo Clinic, 2012a, 2012b)。

神経性大食症の患者は、むちゃ食い行動をとります。この行動の後には、摂取した大量の食物を相殺しようと試みます。嘔吐を引き起こすことや下剤の使用によって食物を排出することは、2つの一般的な相殺行動です。罹患している人の一部は、むちゃ食いを補うために過度の運動をします。大食症は、腎不全、心不全、虫歯など、多くの健康への悪影響をもたらします。さらに、そのような個人は不安や抑うつに悩まされることも多く、物質乱用のリスクも高くなります(Mayo Clinic, 2012b)。神経性大食症の生涯有病率は、女性では約1%、男性では0.5%未満と推定されています(Smink, van Hoeken, & Hoek, 2012)。

2013年に発行された診断と統計マニュアル第5版では、むちゃ食い障害はアメリカ精神医学会(APA)によって認められた障害となっています。大食症とは異なり、むちゃ食いの後には排出などの不適切な行動が続くことはありませんが、罪悪感や恥ずかしさなどといった苦痛が伴います。このような心理的苦痛を伴うことが、むちゃ食い障害と過食との違いです(American Psychiatric Association [APA], 2013)。

神経性無食欲症は、飢餓状態および/または過度の運動を通じて、平均よりもはるかに低い体重を維持することによって特徴付けられる摂食障害です。神経性無食欲症の患者は、歪んだ身体イメージ(文献では身体醜形症の一種として言及されます)を持っていることがしばしばあります。つまり、彼らは太っていないのに自分のことを過体重であると見なしてしまいます。神経性無食欲症は、神経性大食症と同様に、多くの顕著な健康上の悪影響と関連しています:それは、骨量減少、心不全、腎不全、無月経(月経の停止)、生殖腺の機能低下、極端な場合には死に至るなどです。さらに、不安障害、気分障害、および物質乱用を含む、さまざまな心理的問題を引き起こすリスクも高まります(Mayo Clinic, 2012a)。神経性無食欲症の有病率の推定値は、研究によって異なりますが、一般的に女性では1%弱から4%強の範囲です。一般に、男性の有病率はかなり低いです(Smink et al., 2012)。

学習へのリンク

神経性無食欲症の公衆の認知度を高めるためのイタリアの広告キャンペーンについてのニュース(http://openstax.org/l/anorexic)を見て、さらに学んでください。

神経性無食欲症と神経性大食症は、さまざまな文化の男女に起こりますが、西洋社会のコーカサス系[白人系]女性が最もリスクの高い集団となる傾向があります。最近の研究では、15歳から19歳の女性が最もリスクが高いことが示されています。これらの摂食障害は、大衆メディアやファッション界でしばしば描写される痩せた理想像というメッセージに関連した、文化的に縛られた現象であることが長い間疑われています(図10.13)(Smink et al., 2012)。摂食障害の発症には社会的要因が重要な役割を果たしていますが、遺伝的要因によって人々がこれらの障害にかかりやすくなっているかもしれない証拠があります(Collier & Treasure, 2004)。

図10.13 | 私たちの社会に住む若い女性には、極端に痩せたモデルの画像(正確に描写されている場合もあれば、さらに細く見えるようにデジタル加工されている場合もあります)が押し寄せています。これらのイメージは、摂食障害の原因となることがあります。(credit: Peter Duhon)

10.3 性行動

学習目標

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:

  • 性行動と性的動機付けを制御する基本的な生物学的メカニズムを理解する
  • 人間のセクシュアリティーに関するアルフレッド・キンゼイの研究の重要性を理解する
  • ウィリアム・マスターズとバージニア・ジョンソンの研究が、性反応周期の理解に貢献したことを認識する
  • 性的指向と性同一性を定義する

食べ物と同じように、性交も私たちの生活における重要な部分です。進化的な視点からは、理由は明白です—種の存続です。しかしながら、人間の性行動は、生殖よりも多くのものを含んでいます。この節では、人間の性行動と性的動機付けに関して行われた研究の概要を説明します。この節は、ジェンダーや性的指向に関連する問題の議論で締めくくります。

性行動と性的動機付けの生理学的メカニズム

性行動や性的動機付けの根底にある生理学的メカニズムについて私たちが知っていることの多くは、動物の研究から得られています。あなたが学んできたように、視床下部は動機付けられた行動において重要な役割を果たしており、性交も例外ではありません。実際、視床下部の内側視索前野と呼ばれる部位を損傷させると、雄のラットが性行動を行う能力が完全に阻害されます。驚くべきことに、内側視索前野の損傷では、雄のラットが性的に受け入れ可能な雌に近づくためにどれだけ働きかけるかは変わりません(図10.14)。このことは、性行動を行う能力とそれを行うための動機付けは、互いに異なる神経系によって媒介されている可能性を示唆しています。

図10.14 | 性行動を行うことができない雄のラットでも、受け入れ可能な雌を求めていることから、性行動を行う能力とそれを行うための動機付けは、脳内の異なる系によって媒介されていることが示唆されます。(credit: Jason Snyder)

動物の研究では、扁桃体や側坐核などの大脳辺縁系の構造が性的動機付けにとって特に重要であることが示唆されています。これらの領域が損傷を受けると、性行動を行う能力はそのままに、性行動を行う動機付けが低下します(図10.15)(Everett, 1990)。これと似たような性的動機付けと性的能力との乖離は、雌のラットでも観察されています(Becker, Rudick, & Jenkins, 2001; Jenkins & Becker, 2001)。

図10.15 | 視床下部の一領域である内側視索前野は、性行動を行う能力に関与していますが、性的動機付けには影響しません。対照的に、扁桃体と側坐核は、性行動の動機付けには関与しますが、性行動を行う能力には影響しません。

人間の性行動はラットに見られるものと比べてはるかに複雑ですが、この研究から動物と人間の類似点がいくつか導き出されます。勃起不全の治療に使われる薬が世界中で人気を博していること(Conrad, 2005)は、人間においても性的動機付けと性行動を行う能力が乖離し得るという事実を物語っています。さらに、視床下部の機能異常を伴う疾患は、しばしば性腺機能低下症(性腺の機能低下)および性機能低下(たとえば、プラダー・ウィリ症候群)を伴います。内分泌機能における視床下部の役割を考えると、内分泌系から分泌されるホルモンが性的動機付けや性行動に重要な役割を果たしているのは驚くようなことではありません。たとえば、多くの動物は、生殖腺から適切な組み合わせの性ホルモンが分泌されていないと、性的動機付けの兆候を示すことはありません。人間の場合にはこれは当てはまりませんが、男女ともに、循環しているテストステロンの濃度によって性的動機付けが変化することを示す証拠が数多くあります(Bhasin, Enzlin, Coviello, & Basson, 2007; Carter, 1992; Sherwin, 1988)。

キンゼイの研究

1940年代後半よりも以前では、性に関する信頼性の高い、経験的に基づいた情報へのアクセスは限られていました。医師は、性に関する問題についての訓練をほとんど受けていないという事実にもかかわらず、性に関するあらゆる問題の権威と見なされていました。人々が性について知っていることのほとんどは、自分自身の経験や仲間との会話を通じて学んだものであったと考えられます。インディアナ大学のアルフレッド・キンゼイ博士は、人間のセクシュアリティーに関する問題についてのより開かれた対話が人々の利益になると考え、この主題についての大規模な調査研究を開始しました(図10.16)。その取り組みの一部の結果は、1948年に『人間男性の性行動』、1953年に『人間女性の性行動』という2冊の本で出版されました(Bullough, 1998)。

図10.16 | 1947年、アルフレッド・キンゼイは、インディアナ大学に性・ジェンダー・生殖についてのキンゼイ研究所を設立しました(写真は2011年)。キンゼイ研究所は、重要な心理学的研究の場として何十年も存続しています。

当時、キンゼイ報告は非常にセンセーショナルなものでした。アメリカの大衆の私的な性行動が、これほど大規模に科学的な調査の対象となったことはかつてありませんでした。統計や科学用語が満載された本は、一般の人々にも驚くほどよく売れて、人々は人間のセクシュアリティーについての開かれた会話に参加し始めました。あなたが想像できるように、このような情報が公開されることは、誰にとっても喜ばしいというわけではありませんでした。実際に、いくつかの国ではこれらの本が禁止されました。最終的に、その論争によって、キンゼイはロックフェラー財団から得ていた研究継続のための資金を失うことになりました(Bancroft, 2004)。

キンゼイの研究は、標本抽出や統計上の誤りが多いと広く批判されていますが(Jenkins, 2010)、この研究が人間の性行動や性的動機付けに関する後の研究を形作るのに大きな影響を与えたことはほとんど疑いの余地はありません。キンゼイは、研究に参加した志願者から報告された、驚くほど多様な性行動や性的経験について述べています。かつては極めて稀で問題含みであると考えられていた行動が、以前に想像されていたよりもはるかに一般的で無害であることが実証されました(Bancroft, 2004; Bullough, 1998)。

学習へのリンク

アルフレッド・キンゼイの生涯と研究を描いた2004年の映画『愛についてのキンゼイ・レポート』の予告編(http://openstax.org/l/Kinsey)を見て、さらに学んでください。

キンゼイの研究成果の中には、女性も男性と同じように性に興味を持ち、経験をしていること、男性も女性も健康に悪影響を及ぼすことなく自慰行為をすること、および同性愛の行為はかなり一般的であること、が含まれます(Bancroft, 2004)。また、キンゼイは、個人の性的指向を分類するために、現在でもまだよく使われているキンゼイ指標と呼ばれる連続体を開発しました(Jenkins, 2010)。この指標によると、性的指向とは、同性の人間(同性愛)、異性の人間(異性愛)、またはその両方(両性愛)に対する個人の感情的・性的な魅力のことです。

マスターズとジョンソンの研究

1966年、ウィリアム・マスターズとバージニア・ジョンソンは、性行動時の生理学的反応の研究に協力することに同意した700人近くの人々を観察した結果を詳述した本を出版しました。マスターズとジョンソンは、個人的なインタビューや調査(サーベイ)を用いてデータを収集したキンゼイとは異なり、さまざまな体位で性交する人々を観察するとともに、手や器具を使って自慰行為をする人々を観察しました。それを行う際、研究者は血圧や呼吸数などの生理学的変数の測定値や、膣内の潤滑状態、陰茎の勃起状態(勃起に関連する膨張)などの性的覚醒についての測定値を記録しました。マスターズとジョンソンは、研究の一環として、合計で1万回近くの性行為を観察しました(Hock, 2008)。

これらの観察に基づいて、マスターズとジョンソンは、性反応周期を、男女でよく似た4つの段階に分けました:それは、興奮期、平坦期、オーガズム期、消退期です(図10.17)。興奮期は、性反応周期の覚醒期であり、陰茎やクリトリスの勃起、膣管の潤滑と拡張によって特徴付けられます。平坦期には、女性は膣のさらなる膨張と小陰唇への血流増加を経験し、男性は完全な勃起を経験するとともに、しばしば射精前の液体が見られます。この時期には、男女ともに筋肉の緊張の高まりを経験します。オーガズム期は、女性の場合、骨盤と子宮が律動的に収縮し、筋肉の緊張が高まることを特徴とします。男性の場合は、骨盤の収縮に伴って尿道付近に精液が溜まり、それは最終的に性器の筋肉の収縮によって押し出されます(すなわち、射精)。消退期には、血圧の低下と筋肉の弛緩を伴って、比較的速やかに覚醒していない状態に戻ります。多くの女性はすぐに性反応周期を繰り返すことができる一方で、男性は消退期の一部として、より長い不応期を経なければなりません。不応期とは、オーガズムに続く期間であって、個人が次のオーガズムを経験することができないときのことです。男性の場合、不応期の長さは個人によって劇的に異なることがあり、数分程度の不応期もあれば、1日程度の不応期もあります。男性は年齢を重ねるごとに、不応期が長くなる傾向にあります。

図10.17 | このグラフは、マスターズとジョンソンによって記述された性反応周期のさまざまな段階を示しています。

マスターズとジョンソンは、性反応周期と女性が何度もオーガズムに達する可能性に関する研究によって与えられた洞察に加え、生殖の解剖学的構造についても重要な情報を収集しました。彼らの研究は、よく引き合いに出される弛緩状態と勃起状態の陰茎の平均的な大きさについての統計値(それぞれ3インチ[約7.6センチメートル]と6インチ[約15.2センチメートル])を示すとともに、男性の勃起した陰茎の大きさとパートナーの女性に性的快感を与える能力との関係についての長年の通説を覆しました。さらに、彼らは膣が非常に弾力性のある構造であり、さまざまな大きさの陰茎に適合することができることを見出しました(Hock, 2008)。

性的指向

先に述べたように、人の性的指向とは、他の個人に対する感情的・性的な魅力のことです(図10.18)。大多数の人が異性愛者であると認識していますが、米国では、同性愛者、両性愛者、全性愛者、無性愛者、または他の非異性的なセクシュアリティーであると認識している人もかなりの数にのぼります。調査では、人口の3%から10%の人が同性愛者であると認識していることが示唆されています(Kinsey, Pomeroy, & Martin, 1948; LeVay, 1996; Pillard & Bailey, 1995)。(両性愛の人は、自分のジェンダーの人と他のジェンダーの人に引き付けられます。全性愛の人は、性別、性同一性、またはジェンダーの発露に関係なく魅力を感じます。無性愛の人は、性的な魅力を感じないか、性行為にほとんどあるいはまったく関心がありません。)

図10.18 | 成人人口の3%から10%の人が同性愛者であると認識しています。(credit: Till Krech)

性的指向の問題は、長い間、ある人がストレートである一方、別の人がゲイである原因を究明することに関心を持つ科学者を魅了してきました。長い間、人々は、この違いは社会化や家庭での経験の違いから生じるものだと考えてきました。しかしながら、研究では、異性愛者と同性愛者の間では、家庭的な背景や経験が非常に似通っていることが、一貫して示されています(Bell, Weinberg, & Hammersmith, 1981; Ross & Arrindell, 1988)。

また、遺伝的・生物学的なメカニズムも提案されており、有力な研究の証拠では、性的指向の根底には生物学的な要素があることが示唆されています。たとえば、過去25年間の研究では、性的指向への遺伝子レベルの寄与が証明されており(Bailey & Pillard, 1991; Hamer, Hu, Magnuson, Hu, & Pattatucci, 1993; Rodriguez-Larralde & Paradisi, 2009)、一部の研究者は、人間の性的指向に見られる変動の少なくとも半分は遺伝子が説明すると推定しています(Pillard & Bailey, 1998)。また、異性愛者と同性愛者での脳の構造と機能の違いを報告している研究もあり(Allen & Gorski, 1992; Byne et al., 2001; Hu et al., 2008; LeVay, 1991; Ponseti et al., 2006; Rahman & Wilson, 2003a; Swaab & Hofman, 1990)、さらには、基本的な体の構造や機能の違いさえも観察されています(Hall & Kimura, 1994; Lippa, 2003; Loehlin & McFadden, 2003; McFadden & Champlin, 2000; McFadden & Pasanen, 1998; Rahman & Wilson, 2003b)。総合すると、これらのデータは、性的指向がかなりの程度、生まれつきのものであることを示唆しています。

性的指向についての誤解

性的指向がどのように決定されるかにかかわらず、研究によって、性的指向は選択ではなく、むしろ変更することのできない比較的安定した人間の特性であることが明らかにされています。ゲイの転向療法が成功したという主張は、研究デザイン、実験参加者の募集、およびデータの解釈に対する顕著な懸念のため、研究界から広く批判されています。このように、個人が自分の性的指向を変えることができるということを示唆する、信頼できる科学的証拠はありません(Jenkins, 2010)。

転向療法の成功例として最も広く引用されているものの1つの著者であるロバート・スピッツァー博士は、科学界とゲイ・コミュニティーの双方に対して、自らの過ちを謝罪しました。彼は、2012年春、アーカイヴズ・オブ・セクシュアル・ビヘイバー誌の編集者に宛てた公開書簡で、自らの論文を撤回しました(Carey, 2012)。この書簡の中で、スピッツァーはこう書いています:

私は、この研究に対する主要な批判がおおむね正しいと今では判断していることを認めるような内容を書こうと考えていました……私は、私の研究が矯正療法の効果について証明されていない主張をしたことについて、ゲイ・コミュニティーに謝罪する義務があると考えています。また、一部の「非常に意欲的な」人々に矯正療法が有効であることを私が証明したと信じたために、何らかの形態の矯正療法を受けて時間やエネルギーを無駄にしたゲイの人たちにも謝罪します。(Becker, 2012, pars. 2, 5)

ゲイの転向療法は効果がないだけでなく、潜在的に有害であることを示唆する研究を引用して、そのような療法を違法にするための立法活動がすでになされたか(たとえば、カリフォルニア州では現在違法となっています)、あるいは全米で進行中であり、多くの専門機関がこの実践に反対する声明を発表しています(Human Rights Campaign, n.d.)。

学習へのリンク

このスピッツァー博士の手紙の草稿(http://openstax.org/l/spitzer)を読んで、さらに学んでください。

性同一性

ゲイやレズビアンのセクシュアリティーについての画一的な態度が存在するため、多くの人が性的指向と性同一性を混同しています。実際には、この2つは関連しているものの、異なる問題です。性同一性とは、自分が男性または女性であるという感覚のことを指します。一般的には、私たちの性同一性は染色体上の性別および表現型上の性別に対応していますが、必ずしもそうではありません。トランスジェンダーの人の性同一性は、生まれたときに割り当てられた性別とは異なります。トランスジェンダーの人は、自分自身を表現するために、略語(たとえば、トランス)や、ノンバイナリーなどの用語を含む、さまざまな言葉を使用することがあります。

個人が、自分の生物学的性別に関連したジェンダーを認識することに違和感を覚える場合、性別違和を経験することになります。性別違和とは、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)における診断カテゴリーの1つで、ほとんどの人が引き受けているジェンダーとは異なるジェンダーを認識している人を指します。DSM-5の診断基準を満たすためには、この違和感が少なくとも6か月以上継続し、重大な苦痛や機能不全をもたらさなければなりません。子供がこの診断カテゴリーに分類されるためには、他のジェンダーになりたいという願望を言葉にしなければなりません。すべてのトランスジェンダーの人が性別違和を経験するわけではなく、その診断分類は普遍的に認められているわけではないということに留意しておくことが重要です。

性別違和に分類される人の多くは、自分の性同一性と一致する方法で生活を送ろうとします。これには、異性の服を着たり、異性のアイデンティティーを持つことが含まれます。また、そのような個人は、身体を異性に似せようとする試みとしてトランスジェンダー・ホルモン療法を受けたり、一部の場合では、外性器の見た目を自分の性同一性に近づけるように変更する手術を選択したりすることもあります(図10.19)。これらは劇的な変化のように聞こえるかもしれませんが、性別違和の人がこのような措置をとるのは、彼らにとって自分の身体が自然の過ちであるように見え、その過ちを修正しようとしているからです。

性同一性についての科学的知識と一般的な理解は進化し続けており、今日の若者は、前の世代に比べて、ジェンダーが何を意味するかについて異なる考えを探求し、開かれた形で表現する機会が増えています。最近の研究では、ミレニアル世代(18~34歳)の大多数は、ジェンダーのことを厳密な男性/女性の二分法ではなく、スペクトラムとして捉えており、12%の人がトランスジェンダーまたは性別不適合であると認識していると示されています。さらに、13~20歳の人の半数以上が、ジェンダー中立な代名詞(they/themなど)を使っている人を知っています(Kennedy, 2017)。このような言葉の変化は、ミレニアル世代とZ世代の人々が、ジェンダーの経験そのものを異なる形で理解していることを意味しています。若者がこの変化を先導する中で、公共のトイレ政策から小売店の組織まで、さまざまな領域で別の変化が生まれています。たとえば、一部の小売店では、「ピンクとブルー」の服やおもちゃの通路をなくすなど、伝統的なジェンダーに基づく商品のマーケティングを変更し始めています。このような変化があっても、従来のジェンダー規範の外側に存在している人は、難しい課題に直面しています。伝統的な規範からわずかに外れた人でさえも、差別の標的となり、時には暴力を振るわれることもあります。

図10.19 | トランスジェンダーであることを公表している女優のラヴァーン・コックスは、テレビのレギュラーシリーズでトランスジェンダーの役柄を演じた初めてのトランスジェンダー女優です。彼女はまた、この「私は女性じゃないの?」という講演ツアーのように、自身の職業の外側においてLGBTQ+の問題についての擁護者でもあります。(credit: modification of work by “KOMUnews_Flickr”/Flickr)

学習へのリンク

トランスジェンダーの経験と、自己のアイデンティティーが身体によって裏切られたときに生じる断絶について、直接聞いてみましょう。ケイティ・クーリックのトークショーに出演したカルメン・カレラとラヴァーン・コックスの短いインタビュー(http://openstax.org/l/lcox)を見て、さらに学んでください。このトランスジェンダーの移民の経験についてのビデオ(http://openstax.org/l/transimm)では、トランスジェンダーのコミュニティーの人々が世界的に直面している苦悩について説明しています。

性的指向と性同一性における文化的要因

性的指向や性同一性に関わる問題は、社会文化的な要因に大きく影響されます。私たちが性的指向やジェンダーを定義する方法ですら、文化によって異なります。アメリカでは歴史的に異性愛が規範と見なされてきましたが、ゲイの行動に関して異なる態度をとる社会もあります。実際に、いくつかの例では、同性愛の行動のみの期間が、正常な発達と成熟の一部として社会的に規定されています。たとえば、ニューギニアの一部の地域では、若い男の子は一定期間、他の男の子と性的な行動をとることが期待されています。なぜなら、それを行うことは、男の子が男性になるために必要なことだと考えられているからです(Baldwin & Baldwin, 1989)。

アメリカでは、歴史的に2つのジェンダーの文化があります。私たちは個人を男性か女性のどちらかに分類する傾向があります。しかしながら、いくつかの文化では、ジェンダーの追加の変種があり、そのためジェンダーの分類は2つよりも多くなります。たとえば、タイでは、あなたは男性、女性、またはカトーイとなることがあります。カトーイとは、アメリカでは半陰陽やトランスジェンダーと呼ばれるであろう人たちのことです(Tangmunkongvorakul, Banwell, Carmichael, Utomo, & Sleigh, 2010)。半陰陽とは、厳密に生物学的に男性または女性ではないような身体を持つ人々を指す広義の言葉です(Hughes, et al. 2006)。半陰陽の状態は、人生のどの時期にも現れる可能性があります(Creighton, 2001)。子供が男性器と女性器の構成要素を持って生まれることもあれば、XYの染色体の違いが存在することもあります(Creighton, 2001; Hughes, et al. 2006)。

深く掘り下げてみよう

デイヴィッド・ライマーの事例

1965年8月、カナダのウィニペグに住むジャネット・ライマーとロナルド・ライマー夫妻に、双子の息子、ブルースとブライアンが誕生しました。数か月後、この双子に泌尿器系の問題が起こり、医師は子供に割礼をすることによって問題が緩和するかもしれないと勧めました。しかし、割礼を行う際に使用した医療機器の不具合により、ブルースの陰茎は修復不可能なほど損傷してしまいました。取り乱したジャネットとロナルドは、男児をどうすべきか専門家の助言を求めました。偶然、夫妻はジョンズ・ホプキンス大学のジョン・マネー博士と、彼の心理性的中立性の理論を知ることになりました(Colapinto, 2000)。

マネー博士は、トランスジェンダーの人や生まれつき性器が不明瞭な人の研究にかなりの時間を費やしていました。その研究の結果、彼は心理性的中立性の理論を構築しました。彼の理論は、私たちが生まれたときには性同一性に関して原則的に中立であり、具体的な性同一性を持つようになるのは言語を習得するようになってからである、ということを主張しました。さらに、マネー博士は、私たちの性同一性を決定するのは、生物学的なものよりも、幼少期に社会化された方法のほうが究極的にははるかに重要であると考えていました(Money, 1962)。

マネー博士は、双子をジョンズ・ホプキンス大学に連れてくるようジャネットとロナルドに勧め、ブルースを女の子として育てるべきだと説得しました。当時、他に選択肢がほとんどなかったジャネットとロナルドは、ブルースの睾丸を摘出して女の子として育てることに同意しました。カナダに帰国する際には、彼らはブライアンと彼の「妹」であるブレンダを連れて行き、ブレンダには男の子として生まれたことを決して明かさないようにとの明確な指示を受けました(Colapinto, 2000)。

マネー博士は早くから、この自然実験の大成功を科学界に伝えていました。それは、彼の心理性的中立性の理論を完全に裏付けるもののように見えました(Money, 1975)。実際、子供たちとの初期のインタビューでは、ブレンダは「女の子らしい」おもちゃで遊んだり、「女の子らしい」ことをするのが好きな、典型的な少女であるように見えました。

しかしながら、マネー博士は、この事例の成功への反論となるような情報はあまり積極的に公表しませんでした。実際、ブレンダの両親は、彼らの娘がほとんどの女の子のようには振る舞っていないことを常に気にかけており、ブレンダが青年期に差し掛かった頃には、女性としてのアイデンティティーを確立するのに本当に苦労していることが家族には痛いほど伝わっていました。さらに、ブレンダはマネー博士との面会を続けることを次第に嫌がるようになり、両親がまた会いに行かせたら自殺すると脅すほどになっていました。

その時点で、ジャネットとロナルドは、娘に対してブレンダの幼少期の実態を明かしました。ブレンダは最初はショックを受けていましたが、彼女はそれで物事が納得できたと報告しました。最終的に青年期になる頃には、ブレンダは男性としてのアイデンティティーを持つことを決めていました。そして、彼女はデイヴィッド・ライマーとなりました。

デイヴィッドは、自分の男性的な役割にとても満足していました。彼には新しい友人もでき、自分の将来についても考え始めるようになりました。去勢手術によって生殖能力はなくなりましたが、彼はそれでも父親になりたいと望んでいました。1990年にシングルマザーの女性と結婚したデイヴィッドは、夫として、また父親としての新しい役割を楽しんでいました。1997年、デイヴィッドは、マネー博士が自分の事例を心理性的中立性の理論を裏付ける成功例として公表し続けていることを知りました。これを機に、デイヴィッドと彼の兄は、博士の出版物の信用性を覆すために、自分たちの体験を公表することにしました。この暴露は、マネー博士について科学界での猛烈な嵐を巻き起こした一方で、一連の不幸な出来事の引き金ともなり、最終的にデイヴィッドは2004年に自殺しました(O’Connell, 2004)。

この悲しい物語は、性同一性に関わる複雑さを物語っています。ライマーの事例は、性同一性において社会化が生物学的要素に勝ることの証明として紹介されていましたが、この物語の真実によって、科学界や医学界は、半陰陽の子供が関わる事例や、彼らの独特な状況に対処する方法について、より慎重に取り組むようになりました。実際、このような話は、性同一性に関して問題を抱えているかもしれない子供に不必要な危害や苦痛を与えないための対策を促しました。たとえば、ドイツでは2013年に、半陰陽の子供を持つ親が子供を不確定として分類することを認め、子供が自分の性同一性を完全に発達させた後に適切なジェンダーを自分で割り当てることができるようにする法律が施行されました(Paramaguru, 2013)。

学習へのリンク

デイヴィッド・ライマーと彼の家族の経験についてのニュースストーリー(http://openstax.org/l/reimer)を見て、さらに学んでください。

10.4 感情

学習目標

この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:

  • 感情の主要な理論を説明する
  • 感情処理において大脳辺縁系構造が果たす役割を記述する
  • 感情表現を作り出すことと認識することについての遍在的な性質を理解する

私たちは日々の生活を過ごす中で、さまざまな感情を経験しています。感情とは、私たちがしばしば自分の気持ちとして記述する主観的な状態のことです。感情は、主観的な経験、表出、認知的評価、そして生理学的反応の組み合わせによって生じます(Levenson, Carstensen, Friesen, & Ekman, 1991)。しかしながら、この章で後述するように、それぞれの構成要素が生じる正確な順序は明確ではなく、一部の要素は同時に発生することもあります。感情はしばしば、刺激となる主観的な(個人的な)経験から始まります。多くの場合、その刺激は外部からのものですが、必ずしも外界からのものである必要はありません。たとえば、人が戦争を経験したことがなくても、戦争のことを考えると悲しくなる、というようなことがあるかもしれません。感情表出とは、人が感情を表すやり方のことを指し、非言語的行動と言語的行動とを含みます(Gross, 1999)。また、人は、状況によって自分がどのような影響を受けるかを判断しようとする認知的評価も行います(Roseman & Smith, 2001)。さらに、感情には、心拍数の変化や発汗などの生理学的な反応も含まれます(Soussignan, 2002)。

感情と気分という言葉は取り換え可能な形で使われることがありますが、心理学者はこれらの言葉を2つの異なるものを指すために使用しています。典型的には、感情という言葉は、比較的激しく、自分が経験した何かに反応して起こる主観的な情動状態を表します(図10.20)。感情は、しばしば意識的に経験され、意図的であると考えられています。一方、気分とは、経験した何かに反応して起こるのではない、長期にわたる、それほど激しくない情動状態を指します。気分状態は、意識的に認識されないこともあり、感情と関連付いているような意図性を帯びていません(Beedie, Terry, Lane, & Devonport, 2011)。ここでは、私たちは感情に焦点を当てます。あなたは、気分については、心理学的障害を扱う章で詳しく学ぶことになるでしょう。

図10.20 | 幼児は、(a)ある瞬間に極端に幸せになり、(b)次の瞬間には非常に悲しくなるというように、感情を素早く循環します。(credit a: modification of work by Kerry Ceszyk; credit b: modification of work by Kerry Ceszyk)

私たちは、歓喜の絶頂にいることもあれば、絶望のどん底にいることもあります。また、裏切られたときには怒りを感じ、脅かされたときには恐怖を感じ、思いがけないことが起こったときには驚きを感じるかもしれません。この節では、私たちの感情体験を説明する最も有名な理論のいくつかを概説し、感情の生物学的基盤についての洞察を提供していきます。この節は、顔面での感情の表出の遍在的な性質と、他者によるそのような表情を認識する能力についての議論で終わります。

感情についての理論

私たちの感情状態は、生理学的な覚醒、心理的な評価、および主観的な経験の組み合わせで構成されています。これらはまとめて感情の構成要素であり、私たちの経験、背景、および文化が感情を左右します。そのため、同じような状況に直面していても、人によって異なる感情を経験することがあります。感情のさまざまな構成要素がどのように相互作用するかを説明するために、時間の経過とともに、図10.21に示されるようないくつかの異なる感情の理論が提案されてきました。

図10.21 この図は、感情についてのジェームズ-ランゲ理論、キャノン-バード理論、シャクター-シンガーの二要因理論の主な主張を示すものです。(credit “snake”: modification of work by “tableatny”/Flickr; credit “face”: modification of work by Cory Zanker)

感情についてのジェームズ-ランゲ理論は、感情が生理学的な覚醒から生じると主張しています。交感神経系と、脅威にさらされたときの「闘争か、逃走か」反応について学んだことを思い出してください。もしあなたが環境の中で何らかの脅威に遭遇したとしたら(たとえば、裏庭に毒蛇がいたとしたら)、あなたの交感神経系は顕著な生理学的覚醒を起こし、それによってあなたの心臓が早く鼓動して呼吸数が増えるでしょう。感情についてのジェームズ-ランゲ理論によれば、あなたはこの生理学的覚醒が起こった後に初めて恐怖感を経験することになります。さらに、覚醒のパターンが異なれば、それに伴う感情も異なることになるでしょう。

しかしながら、他の理論家は、さまざまな種類の感情を伴って起こる生理学的覚醒が、私たちの経験する多種多様な感情につながるほどはっきりと区別できるものであることに疑いをはさみました。そこで、感情についてのキャノン-バード理論が考案されました。この見解によると、生理学的な覚醒と感情の経験は、同時に、しかし独立して起こります(Lang, 1994)。つまり、あなたが毒蛇を見たとき、あなたが恐怖を感じるのと、体が「闘争か、逃走か」反応を起こすのとはまったく同時だということです。このような感情的な反応と生理学的な覚醒とは、たとえそれらが同時に起こるとしても、別個の独立したものです。

あなたは笑うことによって幸せになるのでしょうか?あるいは、幸せであることによってあなたは笑顔になるのでしょうか?顔面フィードバック仮説は、顔の表情が実際にあなたの感情経験に影響を与えるということを提唱しています(Adelman & Zajonc, 1989; Boiger & Mesquita, 2012; Buck, 1980; Capella, 1993; Soussignan, 2001)。顔面フィードバック仮説を調査した研究では、感情の顔面表現を抑制すると、参加者が経験したいくつかの感情の強度が低下することが示唆されました(Davis, Senghas, & Ochsner, 2009)。ハヴァス、グレンバーグ、グトウスキ、ルカレッリ、およびデイヴィッドソン(Havas, Glenberg, Gutowski, Lucarelli, and Davidson, 2010)は、ボトックス注射を用いて顔の筋肉を麻痺させ、しかめっ面を含む顔の表情を制限したところ、うつ状態の人が、しかめっ面の筋肉を麻痺させた後に、より少ないうつ状態を報告したことを発見しました。他の研究では、顔の表情の強さが感情反応に影響することがわかりました(Soussignan, 2002)。言い換えると、もし些細なことが起こったときに、あなたがまるで宝くじに当たったかのような笑顔を浮かべると、ほんのわずかな笑みを浮かべた場合よりも、実際にあなたはその些細なことでより幸せになります。逆に、あなたがいつも顔をしかめて歩いていると、笑顔でいる場合よりも前向きな感情を持てなくなるかもしれません。興味深いことに、スシニャン(Soussignan, 2002)は、あるタイプの笑顔の強さに関連した生理学的覚醒の違いも報告しています。

G・マラニョン・ポサディージョはスペインの医師で、アドレナリンの心理的効果を研究し、感情の経験に関するモデルを作成しました。マラニョンのモデルは、感情についてのシャクターの二要因理論(または覚醒-認知理論)に先行するものでした(Cornelius, 1991)。感情についてのシャクター-シンガーの二要因理論は、生理学的覚醒と感情経験の両方を考慮に入れた、感情についての理論のもう1つのバリエーションです。この理論によると、感情は生理学的なものと認知的なものの2つの要因で構成されています。つまり、生理学的な覚醒は、文脈の中で解釈され、感情経験を生み出します。裏庭にいる毒蛇の例へと戻ると、二要因理論では、蛇が交感神経系の活性化を引き起こします。これは、所与の文脈では恐怖としてラベル付けされており、私たちの経験は恐怖となります。もし、あなたが交感神経系の活性化を喜びとしてラベル付けしていたら、あなたは喜びを経験していたでしょう。シャクター-シンガーの二要因理論は、生理学的経験のラベル付け(これは認知的評価の一種です)に依拠しています。

マグダ・アーノルドは、評価の意味を探るとともに、評価プロセスがどのようなものか、そしてそれがどのように感情と関係するかの概要を提示した最初の理論家でした(Roseman & Smith, 2001)。評価理論の主要な考え方は、あなたが感情を経験する前に、あなたは思考(認知的評価)を行い、経験する感情はそのときの思考に依存するというものです(Frijda, 1988; Lazarus, 1991)。もしあなたが何かを肯定的なものだと考えれば、あなたの評価が否定的なものであった場合よりも、それに対して肯定的な感情を持つようになりますし、その逆も同様です。評価理論は、同じ出来事に対して2人の人間が全く異なる感情を持つことがあることを説明しています。たとえば、心理学の講師が、感情について発表するようにあなたを指名したとします。あなたは注目を浴びる機会だとしてそれを肯定的に捉え、幸せを経験するかもしれません。しかしながら、もしあなたが人前で話すのが嫌いならば、あなたはそれに対して否定的な評価をして、不安感を経験するかもしれません。

シャクターとシンガーは、私たちが経験する感情のさまざまな種類にわたって生理学的覚醒は非常によく似ているので、実際に経験する感情には状況の認知的評価が重要であると考えました。実際、もし状況が適切であれば、覚醒を何らかの感情経験へと誤って帰属させることも可能かもしれません(Schachter & Singer, 1962)。彼らはその考え方を検証するために、巧妙な実験を行いました。男性参加者は無作為にいくつかのグループに分けられました。一部の参加者には、交感神経系の「闘争か、逃走か」反応に類似した身体的変化を引き起こすエピネフリンの注射を行いました。しかしながら、それらの男性のうち一部の人だけに、注射の副作用としてこれらの反応が予期されると伝えました。エピネフリンの注射を受けた他の男性には、「この注射に副作用はないだろう」または「足のかゆみや頭痛など、交感神経の反応とは関係のない副作用が起こるだろう」と伝えました。この注射を受けた後、参加者は、この研究プロジェクトの他の被験者と思われる人と一緒に部屋で待機しました。実際には、その他の人は研究者の協力者でした。協力者は、台本通りに多幸感や怒りの行動を示しました(Schachter & Singer, 1962)。

生理学的覚醒の兆候を感じることが予期されると言われた参加者に対して、多幸感または怒り(協力者の行動の仕方による)に関連して経験した感情の変化を尋ねたところ、彼らは何も報告しませんでした。しかしながら、注射の作用として生理学的覚醒を予期していなかった男性は、割り当てられた協力者の行動によって多幸感や怒りを経験したと報告する傾向が強くなりました。エピネフリンの注射を受けた全員が同じ生理学的覚醒を経験する一方で、覚醒を予期していなかった人だけが、文脈を利用して覚醒のことを感情状態の変化として解釈しました(Schachter & Singer, 1962)。

強い感情反応は強い生理学的覚醒と関連していることから、心拍数や呼吸数の増加、発汗などを含む生理学的覚醒の兆候を利用して、誰かが本当のことを言っているかどうかを判断できるのではないかと提案する理論家がいました。ここでの仮定は、もし私たちが誰かに対して不誠実なことをしていたら、ほとんどの人が生理学的覚醒の兆候を示すだろうというものです。ポリグラフ、あるいは嘘発見器の検査は、一連の質問に答える人の生理学的覚醒を測定します。この検査を解釈する訓練を受けた人は、回答者がその回答に対して不誠実な態度をとった可能性のある兆候として、覚醒レベルの上昇を伴うような質問への回答を探します。ポリグラフは今でもよく使われていますが、嘘をつくことが生理学的覚醒の特定のパターンと関連しているという証拠はないため、その妥当性と正確性には大きな疑問があります(Saxe & Ben-Shakhar, 1999)。

私たちの感情の経験とそれらの認知的処理との関係性、およびそれらが起こる順序については、依然として研究と議論の対象となっています。ラザルス(Lazarus, 1991)は、私たちの感情が刺激に対する評価によって決定されると主張する認知的仲介理論を開発しました。この評価は、刺激と感情反応の間を仲介するものであり、即時的でしばしば無意識的なものです。シャクター-シンガーモデルとは対照的に、評価は認知的なラベルに先立って行われます。ラザルスの評価の概念については、あなたはストレス、生活様式、および健康を学習する際に詳しく学ぶことになります。しかしながら、認知的なプロセスを重視した、その他の感情についての見解もあります。

あなたが教授によって発表をするように頼まれた例に戻りましょう。もしあなたが人前で話すのが苦手であっても、おそらくなんとかやりこなすでしょう。あなたは意図的に自分の感情をコントロールすることで、話すことができるようになります。しかし、私たちは常に感情を調節しており、感情の調節の多くは、私たちがそれについて能動的に考えることなく行われています。モースと彼女の同僚は、意図的ではない感情のコントロールを意味する自動感情調節(AER)を研究しました。AERとは、単純に感情で反応しないことであり、感情プロセスのあらゆる側面に影響を与えます。AERは、あなたが注意を向ける事柄、評価、感情的な経験をするかどうかの選択、そして感情を経験した後の行動に影響を与えることがあります(Mauss, Bunge, & Gross, 2007; Mauss, Levenson, McCarter, Wilhelm, & Gross, 2005)。AERは、機能に影響を与える知識構造を感覚が活性化するという点で、他の自動的な認知プロセスと類似しています。これらの知識構造には、概念、スキーマ、またはスクリプトが含まれます。

AERの考え方とは、人々がスクリプトやスキーマのように機能する自動的なプロセスを発展させ、そのプロセスは感情を調節するために意図的な思考を必要としないということです。AERは、自転車に乗るようなものです。いったんあなたがプロセスを身につけると、あなたはそれについて考えることなく実行するだけです。AERは適応的であることもあれば不適応的であることもあり、健康にとって重要な意味合いを持っています(Hopp, Troy, & Mauss, 2011)。適応的なAERは、不適応的なAERに比べて良い健康上の結果に結びつきますが、これは主に不適応的なAERを持つ人に比べてストレス要因をうまく経験したり軽減したりするためです(Hopp, Troy, & Mauss, 2011)。あるいは、不適応的なAERは、いくつかの心理学的障害の持続にとって重大なものなのかもしれません(Hopp, Troy, & Mauss, 2011)。モースと彼女の同僚は、戦略によって否定的な感情を減らすことができ、その結果、心理的健康度が高まるということを見出しました(Mauss, Cook, Cheng, & Gross, 2007; Mauss, Cook, & Gross, 2007; Shallcross, Troy, Boland, & Mauss, 2010; Troy, Shallcross, & Mauss, 2013; Troy, Wilhelm, Shallcross, & Mauss, 2010)。また、モースは、感情の測定方法に問題があることも示唆していますが、典型的に測定されている感情の側面のほとんどは有用であると考えています(Mauss, et al., 2005; Mauss & Robinson, 2009)。しかしながら、感情を考慮するもう1つの方法は、私たちの感情に対する理解全体に疑問を投げかけています。

約30年にわたる学際的な研究を経て、バレットは、「私たちが感情を理解していない」と主張しました。彼女は、感情とは生まれたときに脳の中に組み込まれたものではなく、経験に基づいて構築されたものであると提唱しました。構築主義理論における感情とは、世界についてのあなたの経験を構築するような予測です。第7章では、概念とは、言語情報、イメージ、考え方、人生経験のような記憶についての分類やグループ分けであることを学びました。バレットはそれを拡張して、予測であるような感情を概念の中に含めました(Barrett, 2017)。2つの同じ生理学的状態が、予測によって異なる感情状態になることがあります。たとえば、パン屋で胃がキリキリすると脳が予測すると、空腹感を構築することになります。しかしながら、医療検査の結果を待っているときに、胃がキリキリすると脳が予測すると、脳は心配を構築することになります。このように、あなたは同じ生理学的な感覚から2つの異なる感情を構築することがあります。感情は自分ではコントロールできないものではなく、あなたは感情をコントロールし、影響を与えることができます。

学習へのリンク

バレット博士が構築された感情について説明しているこのビデオ(http://openstax.org/l/barrett)を見て、さらに学んでください。

他の2つの著名な見解は、ロバート・ザイアンスとジョゼフ・ルドゥーの研究から生まれました。ザイアンスは、予期しない大きな音に反応して恐怖を感じるなど、ある種の感情は私たちの認知的解釈とは別に、あるいはそれに先立って生じると主張しました(Zajonc, 1998)。彼はまた、私たちが気軽に直感と呼んでいるもの、つまり、誰かや何かに対して説明のつかない好き嫌いを瞬時に経験することがあると考えていました(Zajonc, 1980)。ルドゥーも、いくつかの感情は認知を必要としないものと捉えています:いくつかの感情は、文脈的な解釈を完全に迂回していきます。感情の神経科学に関する彼の研究は、恐怖において扁桃体が主要な役割を果たしていることを明らかにしました(Cunha, Monfils, & LeDoux, 2010; LeDoux 1996, 2002)。恐怖刺激は、2つの経路のうちの1つを通じて脳によって処理されます:その経路とは、視床(ここで刺激が知覚されます)から直接に扁桃体に到達するものか、または、視床から大脳皮質を経て扁桃体に到達するものです。1つ目の経路は素早いものである一方で、2つ目の経路では、刺激の詳細についてより多くの処理を行うことができます。以下の項では、私たちは感情反応の神経科学をより詳しく見ていきます。

感情の生物学

あなたは以前に、感情と記憶に関わる脳の領域である大脳辺縁系について学びました(図10.22)。大脳辺縁系には、視床下部、視床、扁桃体、および海馬が含まれます。視床下部は、所与の感情反応の一部である交感神経系の活性化において役割を果たしています。視床は、さらなる処理のためにそこのニューロンが扁桃体や高次皮質領域へと突出するような、感覚の中継センターとして働きます。扁桃体は、感情的な情報を処理し、その情報を送る役割を果たしています(Fossati, 2012)。海馬は、感情的な経験と認知を統合します(Femenía, Gómez-Galán, Lindskog, & Magara, 2012)。

図10.22 | 視床下部、視床、扁桃体、および海馬を含む大脳辺縁系は、感情反応と記憶の媒介に関与しています。

学習へのリンク

Open Collegesのインタラクティブな3D脳シミュレーター(http://openstax.org/l/bparts1)を使って、脳の部分とその機能について再確認してみましょう。まず、「探索の開始(Start Exploring)」ボタンをクリックしてください。大脳辺縁系にアクセスするには、右側のメニュー(3つのタブのセット)のプラス記号をクリックしてください。

扁桃体

扁桃体は、感情、特に恐怖や不安についての生物学的基盤を理解することに関心のある研究者から大きな注目を集めています(Blackford & Pine, 2012; Goosens & Maren, 2002; Maren, Phan, & Liberzon, 2013)。扁桃体は、基底外側複合体と中心核を含むさまざまな副核から構成されています(図10.23)。基底外側複合体は、脳のさまざまな感覚領域と密接につながっています。それは、古典的条件付けや、学習過程と記憶に感情的な価値を付加するのにとって極めて重要なものです。中心核は、注意において役割を果たしており、視床下部やさまざまな脳幹領域と接続して、自律神経系や内分泌系の活動を調節しています(Pessoa, 2010)。

図10.23 | 扁桃体の基底外側複合体と中心核の解剖学的構造がこの図に示されています。

動物の研究では、母親がいないときに匂いの手がかりと電気ショックを対にして与えられた幼いラットでは、扁桃体の活性化が増加することが実証されています。これは、匂いの手がかりに対する嫌悪感につながり、ラットが匂いの手がかりを恐れることを学習したことを示唆しています。興味深いことに、母親がいる場合、電気ショックを伴うにもかかわらず、ラットはその匂いの手がかりを実際に好むことを示しました。この選好は、扁桃体の活性化の増加を伴いませんでした。このことから、文脈(母親の有無)による扁桃体への影響の違いが、幼いラットが匂いを恐れるようになるか、匂いに惹かれるようになるかを決定したことが示唆されます(Moriceau & Sullivan, 2006)。

ライネキ、コルテス、ベルノー、およびサリヴァン(Raineki, Cortés, Belnoue, and Sullivan, 2012)は、ラットにおいて、幼少期の否定的な経験が扁桃体の機能を変化させ、人間の気分障害に類似した行動パターンを成獣期に引き起こす可能性があることを実証しました。この研究では、幼いラットは、生後8~12日目に虐待的な取り扱いを受けるか、あるいは通常の取り扱いを受けました。虐待的な取り扱いの形態は2種類ありました。1つ目の虐待的な取り扱いの形態は、不十分な寝床の状態です。母親のラットはケージ内の寝床の材料が不足しており、適切な巣を作ることができませんでした。その結果、母親のラットは巣作りのために子供のラットから離れて過ごす時間が長くなり、子供のラットの面倒を見る時間が短くなりました。2つ目の虐待的な取り扱いの形態は、上述のように母親がいない状態で匂いと電気刺激をペアにするような連合学習課題を行いました。対照群は、同じ時期に、十分な寝床を備えたケージで母親と一緒に邪魔されずに過ごしました。虐待を経験した子供のラットは、対照群と比較して、成獣期に抑うつ様症状を示す可能性がはるかに高くなりました。このような抑うつ的な行動は、扁桃体の活性化の増加と関連していました。

人間の研究でも、扁桃体と気分や不安などの心理学的障害との関係が示唆されています。扁桃体の構造と機能の変化は、さまざまな気分障害および/または不安障害のリスクがある、あるいは診断されたことのある青年で実証されています(Miguel-Hidalgo, 2013; Qin et al., 2013)。また、扁桃体の機能的な違いが、双極性障害を患っている人と大うつ病性障害を患っている人を区別するバイオマーカーとして役立つ可能性も示唆されています(Fournier, Keener, Almeida, Kronhaus, & Phillips, 2013)。

海馬

先に述べたように、海馬も感情の処理に関与しています。扁桃体と同様に、海馬の構造と機能が、さまざまな気分障害や不安障害と関連していることが研究で明らかになっています。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者では、海馬のいくつかの部分の体積が著しく減少しており、これは、神経新生(新しいニューロンの生成)と樹状突起分岐(既存のニューロンにおける新しい樹状突起の生成)のレベルの減少に起因するかもしれません(Wang et al., 2010)。このような相関研究で因果関係を主張することは不可能ですが、研究では、PTSDを患っている人を対象とした薬理学的療法または認知行動療法によって、行動が改善し、海馬体積が増加することが実証されています(Bremner & Vermetten, 2004; Levy-Gigi, Szabó, Kelemen, & Kéri, 2013)。

顔の表情と感情の認識

文化は、人々が感情を表示する方法に影響を与えることがあります。文化的表示規則とは、許容される感情表示の種類と頻度を規定する、文化的に特定された基準の集合体のうちの1つです(Malatesta & Haviland, 1982)。したがって、さまざまな文化的背景を持つ人々は、感情の文化的表示規則が大きく異なることがあります。たとえば、米国の個人は、恐怖、怒り、および嫌悪のような否定的な感情を、1人でいる時にも他人がいる時にも表現するのに対し、日本の個人は1人でいる時にしか表現しないことを示した研究があります(Matsumoto, 1990)。さらに、社会的結束を重視する傾向のある文化圏の人は、与えられた文脈の中でどの反応が最も適切であるかを判断できるように、感情反応を抑制する可能性が高いです(Matsumoto, Yoo, & Nakagawa, 2008)。

感情性には、他の特定の文化的特徴も関係しているかもしれません。たとえば、感情処理に関係するジェンダー差があるかもしれません。感情表示のジェンダー差についての研究ははっきりしませんが、感情の調節については男女で異なる可能性があるという証拠がいくつかあります(McRae, Ochsner, Mauss, Gabrieli, & Gross, 2008)。

ポール・エクマン(Ekman, 1972)は、ニューギニアのある男性を調査しました。彼は石器を使う文字を持たない文化の中で生活していました。その文化は孤立しており、それまで外部の人間を見たことはありませんでした。エクマンはこの男性に対して、次のような場合にどのような顔の表情をするか示してもらうよう頼みました:(1)友人が訪ねてきたとき、(2)自分の子供が死んだばかりのとき、(3)喧嘩をしようとしているとき、(4)臭い豚の死骸を踏んだとき。エクマンはニューギニアから帰国した後、40年以上にわたって顔の表情を研究しました。感情の表示規則が異なるにもかかわらず、私たちが感情についての顔の表情を認識し、作り出す能力は普遍的なものであるようです。実際、先天的に目が見えない人でも、他の人の顔面の感情表示を観察する機会がないにもかかわらず、さまざまな感情について同じ顔の表情を作り出します。このことは、感情表現の生成に関わる顔の筋肉の活動パターンが普遍的であることを示唆しているように見えます。確かに、この考え方は、19世紀後半にチャールズ・ダーウィンが著した『人及び動物の表情について』(Darwin, 1872)で示唆されていました。実際に、7つの普遍的な感情が、それぞれ異なる顔の表情と関連していることを示すかなりの証拠があります。その7つとは、幸福、驚き、悲しみ、恐れ、嫌悪、軽蔑、怒りです(図10.24)(Ekman & Keltner, 1997)。

図10.24 | 感情の7つの普遍的な顔の表情が示されています。(credit: modification of work by Cory Zanker)

もちろん、感情は顔の表情だけを通じて示されるわけではありません。私たちは、声のトーン、さまざまな行動、およびボディランゲージを使って、感情状態についての情報を伝えます。ボディランゲージとは、体の位置や動きで感情を表現することです。研究では、私たちは意識的に気づいていなくても、ボディランゲージを通じて伝えられる感情的な情報にかなり敏感であると示唆されています(de Gelder, 2006; Tamietto et al., 2009)。

学習へのリンク

政治的な討論という緊迫した状況でのボディランゲージについてのCNNの短いビデオ(http://openstax.org/l/blanguage1)を見て、さらに学んでください。同じ概念をより日常的な状況に適用する方法を学ぶために、ボディランゲージの専門家であるジェニン・ドライヴァーの『トゥディ・ショー』でのインタビュー(http://openstax.org/l/todayshow)を見てください。

概念をつなげてみよう

感情表現と感情の調節

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、反復的な行動やコミュニケーションおよび社会的問題を特徴とする一群の神経発達障害です。自閉症スペクトラム障害の子供は、他者の感情状態を認識することが困難であり、これは、さまざまな非言語的な感情表現(すなわち、顔の表情)を互いに区別できないことに起因する可能性があることが研究で示されています(Hobson, 1986)。さらに、自閉症の人は、声のトーンや顔の表情を作ることによって感情を表現することも困難であることを示唆する証拠があります(Macdonald et al., 1989)。感情の認識や表現における困難は、自閉症の特徴である社会的相互作用やコミュニケーションの機能不全に寄与しているかもしれません。そのため、これらの困難に対処するためのさまざまな治療的アプローチが模索されています。自閉症の人の感情関連情報の処理を支援することに対して、さまざまな教育カリキュラム、認知行動療法、および薬理学的療法が、いくらかの見込みを示しています(Bauminger, 2002; Golan & Baron-Cohen, 2006; Guastella et al., 2010)。

感情の調節とは、人々が感情的な経験や表現を修正することによって状況や経験に対応する方法について記述するものです。隠れた感情調節戦略は個人の中で起こるものであり、表立った戦略は他者や行動に関わるもの(アドバイスを求めたり、アルコールを摂取したりすることなど)です。アルダオとディクソン(Aldao & Dixon, 2014)は、表立った感情調節戦略と精神病理の関係を研究しました。彼らは、218名の学部生が隠れた戦略と表立った戦略の使用をどのように報告しているか、またいくつかの選択した精神障害に関連する症状をどのように報告しているかを調査し、表立った感情調節戦略は隠れた戦略よりも精神病理の予測因子として優れていることを明らかにしました。また、別の研究では、プレゲーミング(社会的なイベントの前に大量に飲酒する行為)と2つの感情調節戦略との関係を調べ、これらがアルコール関連の問題にどのように寄与するかを理解しようとしたところ、その結果では、関係はあるものの複雑であることが示唆されました(Pederson, 2016)。適応的および不適応的な感情調節のパターンをよりよく理解するためには、これらの分野でさらなる研究が必要です(Aldao & Dixon-Gordon, 2014)。

重要用語

神経性無食欲症:飢餓状態および/または過度の運動を通じて、平均よりもはるかに低い体重を維持する個人によって特徴付けられる摂食障害

肥満治療手術:消化器系を修正して、食べられる食物の量を減らしたり、消化された食物の吸収量を制限したりする手術の一種

基底外側複合体:脳のさまざまな感覚領域と密接なつながりを持つ脳の一部で、古典的条件付けや記憶に感情的な価値を付加するのにとって極めて重要な役割を果たす

むちゃ食い障害:むちゃ食いとそれに伴う苦悩によって特徴付けられる摂食障害の一種

両性愛:同性の人間と異性の人間の両方に対する感情的・性的な魅力

ボディランゲージ:体の位置や動きを通じた感情の表現

神経性大食症:むちゃ食いとそれに続く排出によって特徴付けられる摂食障害の一種

感情についてのキャノン-バード理論:生理学的な覚醒と感情の経験は同時に起こる

中心核:注意をつかさどる脳の一部で、視床下部やさまざまな脳幹領域と接続して、自律神経系や内分泌系の活動を調節する

認知的仲介理論:私たちの感情は刺激に対する評価によって決定される

感情の構成要素:生理学的な覚醒、心理的な評価、および主観的な経験

文化的表示規則:許容される感情表示の種類と頻度を規定する、文化的に特定された基準のうちの1つ

歪んだ身体イメージ:太っていないのに自分のことを過体重であると見なす個人

動因理論:恒常性からの逸脱が生理学的欲求を生じさせ、それらの欲求は、心理的動因の状態を生じさせ、それによって欲求を満たすために行動が導かれ、最終的に系を恒常性に戻すこと

感情:しばしば気持ちとして記述される主観的な状態

興奮期:性的覚醒を伴う性反応周期の段階

外発的動機付け:外的要因や報酬から生じる動機付け

顔面フィードバック仮説:顔の表情は感情に影響を与えることができる

性別違和:生物学的性別に関連したジェンダーを認識していない個人についてのDSM-5の診断カテゴリー

性同一性:男性または女性であるという個人の感覚

習慣:定期的に行っている行動パターン

異性愛:異性の人間に対する感情的・性的な魅力

欲求の階層:基本的な生物学的欲求から、社会的欲求、自己実現に至るまでの欲求のスペクトラム

同性愛:同性の人間に対する感情的・性的な魅力

本能:生物種に固有の学習されない行動パターン

内発的動機付け:外的な報酬よりも内的な感情に基づいた動機付け

感情についてのジェームズ-ランゲ理論:感情は生理学的な覚醒から生じる

レプチン:満腹ホルモン

代謝率:所定の時間内に消費されるエネルギー量

病的肥満:BMIが40超の成人

動機付け:何らかの目標に向かって行動を導くような欲求や必要性

肥満:BMIが30以上の成人

オーガズム期:筋肉の律動的な収縮(および射精)を伴う性反応周期のピーク段階

過体重:BMIが25~29.9の成人

平坦期:興奮期とオーガズム期の間に位置する性反応周期の段階

ポリグラフ:一連の質問に答える人の生理学的覚醒を測定する嘘発見器の検査

不応期:オーガズムの直後であって、個人が次のオーガズムを経験することができない期間

消退期:オーガズム期の後、身体が覚醒していない状態に戻る性反応周期の段階

満腹:飽満感、満足感

感情についてのシャクター-シンガーの二要因理論:感情は生理学的なものと認知的なものの2つの要因で構成されている

自己効力感:ある課題を完了するための自分の能力または潜在力に対する個人の信念

設定値理論:それぞれの個人には変化しにくい理想的な体重(すなわち、設定値)があるという主張

性的指向:同性の人間、異性の人間、またはその両方に対する個人の感情的・性的な魅力

性反応周期:興奮期、平坦期、オーガズム期、および消退期を含む4つの段階に分けられる

トランスジェンダー・ホルモン療法:自分の身体を異性に似せるためにホルモンを使用すること

ヤーキース-ドッドソンの法則:覚醒レベルが比較的高いときには単純な課題が最もよく実行され、覚醒レベルが低いときには複雑な課題が最もよく実行される

この章のまとめ

10.1 動機付け

ある行動を行う動機付けは、内的要因および/または外的要因に由来することがあります。動機付けに関しては、複数の理論が提唱されています。より生物学を重視する理論では、本能や身体の恒常性を維持する必要性が行動を動機付ける仕方を扱っています。バンデューラは、自己効力感が行動を動機付けることを提唱していますが、さまざまな社会的動機に着目した理論も数多く存在します。アブラハム・マズローの欲求の階層は、低いレベルの生理学的欲求から非常に高いレベルの自己実現に至るまでの、複数の動機の関係を示したモデルです。

10.2 空腹と食事

空腹と満腹は高度に調節されたプロセスであり、その結果、人は変化しにくい非常に安定した体重を維持します。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、人は余分なエネルギーを脂肪として蓄えます。著しい過体重であると、心血管疾患、2型糖尿病、特定のがん、およびその他の医学的問題を含む、健康上のリスクや問題が大幅に増加します。痩せていることを美の理想として強調する社会文化的要因と、遺伝的素因は、多くの若い女性が摂食障害を発症する原因となっていますが、摂食障害は年齢やジェンダーを問いません。

10.3 性行動

視床下部と大脳辺縁系のいくつかの構造物は、性行動と性的動機付けにおいて重要です。私たちが性行動をしようとする動機付けとそれを行うための能力は、関連しているものの、別個のプロセスであることを示唆する証拠があります。アルフレッド・キンゼイは大規模な調査研究を行い、人間のセクシュアリティーの驚くべき多様性を明らかにしました。ウィリアム・マスターズとバージニア・ジョンソンは、性行動をする人を観察し、性反応周期の概念を構築しました。しばしば混同されますが、性的指向と性同一性は、関連しているものの異なる概念です。

10.4 感情

感情とは、生理学的な覚醒と認知的な評価からなる主観的な経験です。私たちの感情経験を説明するために、さまざまな理論が提唱されています。ジェームズ-ランゲ理論は、感情が生理学的覚醒の作用として生じると主張しています。キャノン-バード理論は、感情経験が生理学的覚醒と同時かつ独立して起こると主張します。シャクター-シンガーの二要因理論では、生理学的覚醒は関連する文脈に応じて認知的なラベルを受け取り、これら2つの要因が一緒になって感情経験が生じると示唆しています。

大脳辺縁系は、扁桃体と海馬を含む、脳の感情回路です。これらの構造はいずれも、正常な感情処理に加えて、心理学的な気分障害や不安障害においても役割を果たしていると考えられています。扁桃体の活動の増加は、恐怖の学習に関連しており、気分障害のリスクがある人や罹患している人に見られます。海馬の体積は、心的外傷後ストレス障害の患者で減少することが示されています。

感情を表す顔の表情を作り、認識する能力は、文化的背景に関係なく普遍的なもののようです。しかしながら、さまざまな感情をどのような頻度で、どのような状況下で表現するかについて影響を与える文化的表示規則はいくつもあります。また、声のトーンやボディランゲージも、私たちが感情の状態についての情報を伝える手段として役立ちます。

レビュー問題

1.________についての欲求とは、他者との良好な関係を維持することを指します。
a.達成感
b.所属
c.親密さ
d.力

2.________は、欲求の階層を提案しました。
a.ウィリアム・ジェームズ
b.デイビッド・マクレランド
c.アブラハム・マズロー
d.アルバート・バンデューラ

3.________とは、何らかの課題を完了するための自分の能力に対する個人の信念です。
a.生理学的欲求
b.自尊心
c.自己実現
d.自己効力感

4.カールは毎週20ドルで年配の隣人の庭の芝を刈っています。これはどのようなタイプの動機付けでしょうか?
a.外発的
b.内発的
c.動因
d.生物学的

5.あなたが読んだところによると、米国の成人人口の約________は肥満に分類されます。
a.半分
b.3分の1
c.4分の1
d.5分の1

6.________は、脂肪細胞から分泌される化学的メッセンジャーで、食欲を抑制する作用があります。
a.オレキシン
b.アンジオテンシン
c.レプチン
d.グレリン

7.________は、むちゃ食いと、その後に過剰な量の食物を相殺しようとする症状によって特徴付けられます。
a.プラダー・ウィリ症候群
b.病的肥満
c.神経性無食欲症
d.神経性大食症

8.病的肥満に分類されるためには、成人はBMIが________でなければなりません。
a.25未満
b.25~29.9
c.30~39.9
d.40以上

9.動物の研究では、雄のラットにおいて、________は性行動を行う能力にとっては重要であるものの、それを行う動機付けにとっては重要ではないということが示唆されています。
a.側坐核
b.扁桃体
c.視床下部の内側視索前野
d.海馬

10.個人は、性反応周期の________の段階において、女性では子宮収縮を伴う骨盤の律動的な収縮、男性では射精を経験します。
a.興奮期
b.平坦期
c.オーガズム期
d.消退期

11.以下の調査結果のうち、キンゼイの研究の結果ではないものはどれですか?
a.性的欲望と性的能力は別々の機能になり得る。
b.女性は男性と同じように性交を楽しむ。
c.同性愛の行動はかなり一般的である。
d.自慰には何の悪影響もない。

12.もしある人が自分の生物学的性別に通常は関連するジェンダーを認識することに違和感を覚える場合、その人は________を経験していると分類されるでしょう。
a.同性愛
b.両性愛
c.無性愛
d.性別違和

13.心的外傷後ストレス障害を患っている人は、________の体積が減少していることが示されています。
a.扁桃体
b.海馬
c.視床下部
d.視床

14.感情についての________理論によると、感情経験は生理学的な覚醒から生じます。
a.ジェームズ-ランゲ
b.キャノン-バード
c.シャクター-シンガーの二要因
d.ダーウィン主義

15.以下のうち、この章で説明した7つの普遍的な感情の1つではないものはどれですか?
a.軽蔑
b.嫌悪
c.憂鬱
d.怒り

16.以下の感情についての理論のうち、ポリグラフが1つの感情を別の感情から区別することにおいて非常に正確であると示唆するものはどれですか?
a.キャノン-バード理論
b.ジェームズ-ランゲ理論
c.シャクター-シンガーの二要因理論
d.ダーウィン主義理論

批判的思考の問題

17.動機付けについての覚醒理論を支持する人ならば、遊園地に行くことをどのように説明するでしょうか?

18.学校では、適応的な行動を増やすために、しばしば具体的な報酬を使います。これは、学習へと内発的に動機付けられた生徒にとって、どのような不都合があるでしょうか?具体的な報酬が与えられた課題に対する内発的な動機付けを低下させる可能性があることの教育的な意味合いは何ですか?

19.人を低体重、通常の体重、過体重、肥満、または病的肥満に分類するためにしばしば使われる指標をBMIと言います。BMIは体重と身長だけで計算されることを踏まえると、それはどのようにして誤解を招くことがあるでしょうか?

20.この章で示されたように、先進国の西洋文化圏のコーカサス系[白人系]女性は、神経性無食欲症や神経性大食症のような摂食障害のリスクが最も高い傾向にあります。これはなぜでしょうか?

21.個人がどのようにして特定の性的指向を持つようになるのかについて多くの研究が行われていますが、多くの人は、使用された参加者が代表的なものではないかもしれないという理由で、この研究の妥当性を疑問視しています。あなたはこれがなぜ正当な懸念であるかもしれないと考えるのでしょうか?

22.ゲイの転向療法が実際に効果があるという信頼できる科学的証拠はありません。自分が性的指向の転換に成功したと主張する誰かによってあなたが納得するためには、あなたはどのような証拠を見る必要があるでしょうか?

23.交感神経系の活性化を防ぐ薬を飲んだ直後に、毒蛇が足を這っているのを見つけたと想像してください。ジェームズ-ランゲ理論は、あなたの経験についてどのように予測しますか?

24.海馬の体積とPTSDの関係について、因果関係を主張できないのはなぜですか?

個人的に当てはめてみる問題

25.マズローの欲求の階層があなたの行動に何らかの形で影響を与えたかもしれない最近の例を思い浮かべることができますか?

26.現在放送されている人気テレビ番組について考えてみてください。その番組に出てくる女性はどのように見えますか?また、男性はどのように見えますか?メディアは、私たちの社会の男性と女性について、どのようなメッセージを送っていると思いますか?

27.性的指向に関する問題は、現在の政治情勢の最前線にあります。同性婚の合法化に関する現在の議論について、あなたはどう思いますか?

28.あなたの人生の中で、絶対的な高揚感(たとえば、自分の学校のバスケットボールチームが、全国優勝をかけた接戦を制したときなど)と、非常な恐怖感(たとえば、弁論の授業で、部屋いっぱいの100人の見知らぬ人を前にしてスピーチをしようとしているときなど)を感じたときのことを考えてみてください。あなたの覚醒状態の身体的への現れ方について、どのように説明しますか?それぞれの感情状態に関連した生理学的な覚醒には顕著な違いがありましたか?

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