第8章 記憶
この章の概要
8.1 記憶の仕組み
8.2 記憶をつかさどる脳の部位
8.3 記憶の問題点
8.4 記憶力を高めるための方法
はじめに
私たちは一流の学習者かもしれませんが、もし私たちが学んだことを保存する方法を持っていなれば、せっかく得た知識に何の意味があるでしょうか?
もし、あなたが学んだことを何も覚えられないとしたら、あなたの一日がどのようなものになるか、数分かけて想像してみてください。あなたは、どうやって服を着るかを考え出さなければなりません。どんな服を着ればいいのでしょうか?ボタンやファスナーはどうやって使うのですか?あなたは、歯の磨き方や靴ひもの結び方も、誰かに教えてもらう必要があるでしょう。あなたはこれらの事柄について誰に助けを求めればいいのでしょうか?なぜなら、あなたは自分の家の中にいる人たちの顔を認識することができません。待てよ。そこはそもそもあなたの家ですか?おっと、お腹が空いてグーグーなり始めます。あなたは何か食べたいけれども、食べ物はどこに何が置いてあるかわからないし、どうやって調理したらいいのかもわかりません。やれやれ、これでは混乱してしまいます。いっそのこと、ベッドに戻ったほうがいいかもしれません。ベッド……ベッドとは何ですか?
私たちは驚くべき記憶能力を持っていますが、具体的にはどのようにして情報を処理し、保存しているのでしょうか?記憶にはさまざまな種類があるのでしょうか?もしそうなら、さまざまな種類の特徴は何でしょうか?具体的には、私たちはどのようにして記憶を取り出すのでしょうか?また、なぜ私たちは忘れるのでしょうか?この章では、記憶について学んでいきながら、これらの疑問を探っていきます。
8.1 記憶の仕組み
学習目標
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
- 記憶の3つの基本機能について議論する
- 記憶の貯蔵の3つの段階を記述する
- 手続き的記憶と宣言的記憶、意味記憶とエピソード記憶を記述し、区別する
記憶は情報処理システムです。そのため、私たちはそれのことをしばしばコンピュータに例えます。記憶とは、異なる期間にわたって情報を符号化し、保存し、取り出すために使われる一連のプロセスです(図8.2)。
学習へのリンク
記憶についての予想外の事実のビデオ(http://openstax.org/l/unexpectfact)を見て、さらに学んでください。
符号化
私たちは、記憶システムに情報を入力する符号化と呼ばれるプロセスを経て、情報を脳に取り込みます。ひとたび私たちが環境から感覚的な情報を受け取ると、私たちの脳はその情報にラベルを付ける、すなわち符号化します。私たちはその情報を他の類似した情報と一緒に整理し、新しい概念を既存の概念に結びつけます。情報の符号化は、自動処理と労力を要する処理によって行われます。
もし誰かがあなたに「今日のお昼は何を食べましたか」と聞いたなら、あなたはおそらく簡単にその情報を思い出すことができるでしょう。これは自動処理として知られるもので、時間、空間、頻度、および言葉の意味などの詳細を符号化することです。自動処理は通常、なんらの意識的な認識もなしに行われます。あなたがテストの際に最後に勉強したときのことを思い出すのも自動処理の一例です。しかし、あなたが勉強した実際のテスト教材はどうだったでしょうか?おそらく、情報を符号化するためには、かなりの労力と注意が必要だったはずです。これは、労力を要する処理として知られています(図8.3)。
重要な記憶を確実にうまく符号化するためには、どのような方法が最も効果的なのでしょうか?単純な文章であっても、意味のある文章であれば思い出しやすくなります(Anderson, 1984)。以下の文章(Bransford & McCarrell, 1974)を読んだ後、目をそらして30から3ずつ引いていって0になるまで数えてから、この文章を書いてみてください(このページを覗き返してはいけません!)。
- 裂け目があったから、音は不ぞろいだった。
- 瓶が割れたので、航海が遅れることはなかった。
- 布が破れたので、干し草の山は重要だった。
どれくらいうまくできましたか?あなたが書き出した文章は、それだけでは混乱していて、思い出すのが難しかったでしょう。では、もう一度、以下のヒントを用いて、書き出してみましょう:バグパイプ、船の命名、パラシュート。次に、40から4ずつ引いて数えてから、今回は文章をどれだけうまく思い出せたか確認してください。それぞれの文章が文脈に沿っているので、より記憶に残りやすい文章になっていることがわかります。物事は、意味のあるものにすることで、よりよく符号化されます。
符号化には3つの種類があります。単語とその意味を符号化することは、意味的符号化として知られています。これは、ウィリアム・バウスフィールド(Bousfield, 1935)が行った実験で初めて実証されました。その実験で、彼は人々に単語を記憶するよう求めました。60個の単語は実際には4つの意味のカテゴリーに分けられていましたが、単語はランダムに提示されたので、参加者はそれを知りませんでした。単語を思い出すように指示されると、彼らはカテゴリー別に思い出す傾向がありました。これは、彼らが単語を学習する際に、その意味に注意を払っていたことを示しました。
視覚的符号化は画像の符号化であり、音響的符号化は音、特に単語の符号化です。視覚的符号化がどのように行われるかを見るために、次の単語のリストを読んでみてください:車、レベル、犬、真実、本、価値。後で、このリストの単語を思い出してくださいと言われたら、あなたはどの単語を思い出す可能性が高いと考えますか?おそらく、車、犬、本という単語は思い出しやすく、レベル、真実、価値という単語は思い出しにくいでしょう。これはなぜでしょうか?それは、あなたが単語だけよりもイメージ(心象)を思い出しやすいからです。車、犬、本という単語を読んだとき、あなたは心の中にそれらのイメージを作り出しました。これらは具体的でイメージ性の高い言葉です。一方、レベル、真実、価値などの抽象的な単語は、イメージ性の低い言葉です。イメージ性の高い言葉は、視覚的にも意味的にも符号化されるので(Paivio, 1986)、より強固な記憶を築くことができます。
次に、音響的符号化に注目してみましょう。あなたが車を運転していると、ラジオから10年以上も聞いていなかった曲が流れてきますが、あなたはすべての歌詞を思い出して歌っています。アメリカでは、子供はしばしば歌でアルファベットを覚えたり、韻を踏んで月の日数を覚えたりします:「Thirty days hath September, / April, June, and November; / All the rest have thirty-one, / Save February, with twenty-eight days clear, / And twenty-nine each leap year.(9月、4月、6月、11月は30日、それ以外は31日、2月だけは28日、うるう年は29日だ)」。これらの知恵が覚えやすいのは、音響的符号化のおかげです。私たちは、言葉が発する音を符号化します。これが、幼い子供たちに歌や韻、リズムを使って教えることが多い理由の1つです。
3種類の符号化のうち、どのタイプの符号化が言葉の情報を最もよく記憶できると思いますか?何年も前、心理学者のファーガス・クレイクとエンデル・タルヴィング(Craik & Tulving, 1975)は、それを調べるために一連の実験を行いました。参加者には、単語とそれについての質問が与えられました。その質問は、参加者が3つのレベルのいずれかで単語を処理することを要するようなものでした。視覚的処理の質問には、参加者に対して文字のフォントについて尋ねるものなどが含まれていました。音響的処理の質問では、参加者に対して単語の音や韻について尋ね、意味的処理の質問では、参加者に対して単語の意味について尋ねました。参加者は、単語と質問を提示された後、予想外の想起や認識の課題を与えられました。
意味的に符号化された単語は、視覚的、または音響的に符号化された単語よりもよく記憶されました。意味的符号化は、浅いレベルの視覚的・音響的符号化よりも、深いレベルの処理を伴います。クレイクとタルヴィングは、特に自己参照効果と呼ばれるものを適用した場合、私たちは言葉の情報を意味的符号化によって最もよく処理すると結論付けました。自己参照効果とは、自分に関連した情報は、自分にあまり関連していない物事に比べると、よりよく記憶できるという傾向のことです(Rogers, Kuiper, & Kirker, 1977)。あなたがこの章の概念を記憶しようとするに際し、意味的符号化は有益でしょうか?
貯蔵
ひとたび情報が符号化されると、私たちはそれをどうにかして保持しなければなりません。私たちの脳は、符号化された情報を受け取り、それを貯蔵庫に入れます。貯蔵とは、情報の永久的な記録を作成することです。
記憶が貯蔵庫(すなわち、長期記憶)に入るためには、3つの異なる段階を経なければなりません:それは、感覚記憶、短期記憶、および長期記憶です。これらの段階は、リチャード・アトキンソンとリチャード・シフリン(Atkinson & Shiffrin, 1968)が初めて提唱したものです。アトキンソンとシフリンのモデルと呼ばれる彼らの人間の記憶のモデル(図8.4)は、コンピュータが情報を処理するのと同じ方法で、人間は記憶を処理するという信念に基づいています。
アトキンソンとシフリンのモデルだけが記憶のモデルであるというわけではありません。バドリーとヒッチ(Baddeley & Hitch, 1974)は、短期記憶にさまざまな形態があるような作業記憶モデルを提案しました。彼らのモデルでは、短期記憶に記憶を保存することは、コンピュータ上でさまざまなファイルを開いて情報を追加するようなものです。作業記憶のファイルは、限られた量の情報を保持します。短期記憶(またはコンピュータのファイル)のタイプは、受け取った情報のタイプによって異なります。視覚-空間形式の記憶と、話し言葉や書き言葉の記憶があり、それらは視空間スケッチパッド、エピソードバッファ(Baddeley, 2000)、および音韻ループの3つの短期システムに貯蔵されます。バドリーとヒッチによると、3つの短期システムの間の情報の流れを監督・制御するのが記憶の中央実行系であり、中央実行系は情報を長期記憶に移す役割も担います。
感覚記憶
アトキンソン-シフリンモデルでは、環境からの刺激はまず感覚記憶で処理されます。感覚記憶とは、景色、音、味などの短い感覚的な出来事を貯蔵するものです。それは、最長でも数秒程度の非常に短い記憶です。私たちは常に感覚情報にさらされています。しかし、私たちはそのすべてを吸収することはできませんし、ほとんどの情報を吸収することもできません。そして、そのほとんどは私たちの生活に影響を与えません。たとえば、前回の授業で教授がどんな服を着ていましたか?教授が適切な服装をしてさえいれば、実際のところ何を着ていようと関係ありません。視覚、景色、音、匂い、さらには質感についての感覚情報は、価値のある情報ではないと判断された場合、捨てられます。もし私たちがそれらに価値があると思えば、その情報は短期記憶システムへと移されます。
短期記憶
短期記憶(STM)は、入力された感覚記憶を処理する一時的な貯蔵システムです。短期記憶と作業記憶という言葉は取り換え可能なように使われることがありますが、正確には同じものではありません。短期記憶は、作業記憶の1つの構成要素としてより正確に表現されます。短期記憶は、感覚記憶から情報を得て、その記憶をすでに長期記憶にあるものと結びつけることもあります。短期記憶の保存期間は15~30秒です。短期記憶のことを、コンピュータ画面上に表示されている文書や表計算ソフト、ウェブサイトなどの情報と考えてください。その後、短期記憶にある情報は、長期記憶に移されるか(あなたはそれをハードディスクに保存します)、あるいは、破棄されます(あなたは文書を削除したり、ウェブブラウザを閉じたりします)。
リハーサルは、情報を短期記憶から長期記憶へと移行させます。能動的リハーサルとは、情報を短期記憶から長期記憶に移すのを助ける方法です。能動的リハーサルでは、あなたは記憶したい情報を繰り返し(練習し)ます。もしあなたが十分に繰り返せば、それを長期記憶に移すことができるかもしれません。たとえば、多くの子供たちがアルファベットの歌を歌ってABCを学ぶのは、このような能動的リハーサルによるものです。一方、精緻化リハーサルとは、自分が学ぼうとしている新しい情報を、すでに知っている既存の情報と結びつける行為です。たとえば、もしあなたがパーティーで誰かと知り合って、その人の電話番号を覚えたいのに、携帯電話の電源が切れていたとします。そして、その人の電話番号は市外局番203で始まります。あなたは、アブドゥル叔父さんがコネチカット州に住んでいて、市外局番が203であることを思い出すかもしれません。この方法で、新しく知り合った友人の電話番号を思い出そうとするときに、あなたは市外局番を簡単に思い出すことができます。クレイクとロックハート(Craik & Lockhart, 1972)は、何かについて深く考えれば考えるほど、それをよく覚えているという処理水準仮説を提唱しました。
あなたは、「私たちの記憶は一度にどれだけの情報を処理できるのか?」と自分に問いかけているかもしれません。短期記憶の容量と持続時間を調べるために、パートナーにランダムな数字の列(図8.5)を声に出して読んでもらいましょう。それぞれの数字列の最初に「用意はいい?」と言ってから始めて、「思い出して」と言って終わるようにします。そのとき、あなたは記憶からその数字の列を書き出してみます。
あなたが正しい数字列を答えることのできた最長の数字列を記録してください。ほとんどの人は、おそらく7プラスマイナス2に近い容量になるでしょう。1956年、ジョージ・ミラーは、短期記憶の容量に関するほとんどの研究をレビューし、人は5~9個の項目を保持できることを発見しました。そこで、彼は、短期記憶の容量が「マジックナンバー」の7プラスマイナス2であると報告しました。しかしながら、最近の研究では、作業記憶の容量は4プラスマイナス1ということが見出されています(Cowan, 2010)。一般的に、ランダムな文字よりもランダムな数字の方が、いくらか良く思い出すことができ(Jacobs, 1887)、また、目で見る情報(視覚的符号化)よりも耳で聞く情報(音響的符号化)の方が、しばしばわずかによく思い出すことができます(Anderson, 1969)。
短期記憶の保持に影響を与える要因として、記憶痕跡の減衰と干渉があります。ピーターソンとピーターソン(Peterson & Peterson, 1959)は、トライグラム(三重文字:CLSなど)と呼ばれる3つの文字列を使い、それを3秒から18秒の間のさまざまな時間間隔で思い出させるようにして、短期記憶を調査しました。参加者は、3秒後には約80%のトライグラムを覚えていましたが、18秒後には10%しか覚えていませんでした。ここから彼らは、短期記憶が18秒で減衰すると結論付けました。減衰の間には、記憶の痕跡が時間の経過とともに活性化されなくなり、情報が忘れられていきます。しかしながら、ケッペルとアンダーウッド(Keppel & Underwood, 1962)は、トライグラム課題の最初の試行のみを調べ、順向干渉も短期記憶の保持に影響を与えることを発見しました。順向干渉の間には、以前に学習した情報が新しい情報を学習する能力を妨げます。記憶痕跡の減衰も順向干渉も、短期記憶に影響を与えます。長期記憶に到達した情報は、シナプスレベルでは数時間で、記憶システムでは数週間以上かけて固定されなければなりません。
長期記憶
長期記憶(LTM)とは、情報を継続的に貯蔵することです。短期記憶とは異なり、長期記憶の貯蔵容量は無制限であると考えられています。長期記憶には、数分以上前に起こったことで、あなたが思い出すことのできるすべての事柄が含まれます。長期記憶がどのようにして編成されるかを考えることなく、長期記憶を実際に考察することはできません。あなたが「ピーナッツバター」と聞いたとき、心の中に真っ先に思い浮かぶ最初の言葉は何でしょうか?ゼリーを思い浮かべましたか?もしそうなら、あなたはおそらくピーナッツバターとゼリーを頭の中で結びつけているはずです。一般的に、記憶は意味ネットワーク(または連想ネットワーク)で整理されると言われています(Collins & Loftus, 1975)。意味ネットワークは概念で構成されています。あなたが記憶について学んだことから思い出せるように、概念とは、言語情報、イメージ、考え方、または人生経験などの記憶についてのカテゴリーまたはグループ分けのことです。個人の経験や専門知識が概念の配置に影響を与えることはありますが、概念は心の中で階層的に配置されると考えられています(Anderson & Reder, 1999; Johnson & Mervis, 1997, 1998; Palmer, Jones, Hennessy, Unze, & Pick, 1989; Rosch, Mervis, Gray, Johnson, & Boyes-Braem, 1976; Tanaka & Taylor, 1991)。関連する概念は結びつけられており、その結びつきの強さは、2つの概念がどれだけ頻繁に関連付けられているかに依存します。
意味ネットワークは、個人の経験に基づいて異なります。記憶にとって重要なことは、意味ネットワークの一部を活性化すると、その部分に結びつけられた概念も程度の差こそあれ活性化されるということです。このプロセスは、活性化拡散として知られています(Collins & Loftus, 1975)。ネットワークの1つの部分が活性化されると、関連する概念はすでに部分的に活性化されているので、よりアクセスしやすくなります。あなたが何かを思い出したり、思い起こしたりするとき、あなたはある概念を活性化します。すると、それに関連する概念が部分的に活性化されるので、それらをより簡単に思い出すことができます。しかしながら、その活性化は一方向だけに広がるわけではありません。あなたが何かを思い出すときには、通常、アクセスしようとしている情報を得るためのルートがいくつかあり、概念への結びつきが多いほど、あなたが思い出せる可能性は高くなります。
長期記憶には、顕在記憶と潜在記憶の2種類があります(図8.6)。顕在記憶と潜在記憶の違いを理解することは重要です。なぜなら、加齢、特定の種類の脳外傷、および特定の障害が、顕在記憶と潜在記憶に異なる形で影響を与えるからです。顕在記憶とは、私たちが意識的に記憶したり、思い出したり、報告したりしようとするものです。たとえば、もしあなたが化学の試験のために勉強をしている場合、あなたが学習している内容は顕在記憶の一部となるでしょう。コンピュータの例えで言えば、あなたの長期記憶の中の一部の情報は、あなたがハードドライブに保存した情報のようなものでしょう。それはデスクトップ(あなたの短期記憶)には存在しませんが、ほとんどの場合、必要なときにこの情報を引き出すことができます。しかし、すべての長期記憶が強い記憶であるわけではなく、一部の記憶は手がかりを使うことによってようやく思い出すことができます。たとえば、あなたはアメリカの首都などの事実は簡単に思い出せても、去年の夏に近くの街を訪れたときに夕食をとったレストランの名前はなかなか思い出せないでしょう。しかし、「そのレストランの店名はオーナーの名前に由来している」というような手がかりは、あなたがそのレストランの名前を思い出すための助けになるかもしれません。顕在記憶は、言葉で表現できることから宣言的記憶と呼ばれることもあります。顕在記憶はエピソード記憶と意味記憶に分けられます。
学習へのリンク
短期記憶と長期記憶について説明したビデオ(http://openstax.org/l/HMbrain)を見て、記憶がどのように保存され、取り出されるかについてさらに学んでください。
エピソード記憶とは、私たちが個人的に経験した出来事(すなわち、エピソード)についての情報です。たとえば、自分の前回の誕生日の記憶はエピソード記憶です。通常、エピソード記憶は物語として報告されます。エピソード記憶の概念は、1970年代に初めて提唱されました(Tulving, 1972)。それ以来、タルヴィングと他の人たちはこの理論を再定式化し、現在では、科学者たちは、エピソード記憶とは、特定の時間に特定の場所で起こった事(ある出来事についての、いつ、どこで、何が)についての記憶であると考えています(Tulving, 2002)。エピソード記憶は、視覚的なイメージや親密さの感情を想起することを伴います(Hassabis & Maguire, 2007)。意味記憶は、単語、概念、言語に基づいた知識や事実についての知識です。意味記憶は通常、事実として報告されます。意味とは、言語や言語についての知識に関係することを意味します。たとえば、「心理学の定義とは何か」、「アフリカ系アメリカ人で最初の米国大統領は誰か」といった質問に対する答えは、意味記憶に保存されています。
潜在記憶とは、私たちの意識の一部ではない長期記憶のことです。潜在記憶は私たちの認識の外側で学習され、意識的に思い出すことはできませんが、潜在記憶は何らかの課題をこなす際に示されます(Roediger, 1990; Schacter, 1987)。潜在記憶は、人工文法の遂行(Reber, 1976)、単語の記憶(Jacoby, 1983; Jacoby & Witherspoon, 1982)、および、話されても書かれてもいない不測の事態と規則の学習(Greenspoon, 1955; Giddan & Eriksen, 1959; Krieckhaus & Eriksen, 1960)などの認知的に労力を要する課題でもって研究されています。コンピュータの例えに戻ると、潜在記憶はバックグラウンドで動作しているプログラムのようなもので、あなたはその影響を意識することはありません。潜在記憶は、認知的な課題だけでなく、観察可能な行動にも影響を与えます。いずれの場合も、あなたは通常は、その記憶のことを、課題を適切に表現する言葉へと置き換えることができません。潜在記憶には、手続き的記憶、プライミング、感情的条件付けを含む、いくつかの種類があります。
潜在的な手続き的記憶は、しばしば観察可能な行動を用いて研究されます(Adams, 1957; Lacey & Smith, 1954; Lazarus & McCleary, 1951)。潜在的な手続き的記憶は、何かをするための方法についての情報を保存するものであり、それは歯を磨くこと、自転車に乗ること、車を運転することなどの、技能を要する行動についての記憶です。あなたはおそらく、最初に挑戦したときは自転車の乗り方や車の運転の仕方があまり上手ではなかったでしょうが、それらの物事を1年間やった後にはだいぶ上手になったことでしょう。あなたが自転車にうまく乗れるようになったのは、バランスをとる能力を身につけたからです。あなたは最初は体をまっすぐに立てることを考えていたかもしれませんが、今は難なくそれができています。また、あなたはバランスをとるのが得意になっても、それを正確に行う方法を人に伝えることはできないでしょう。同じように、運転を習ったばかりの頃は、あなたはおそらくいろいろなことを考えていたと思いますが、今はほとんど考えることなくそれらをやっています。あなたがこれらの課題のやり方を教わった当初は、誰かがやり方を教えてくれたかもしれませんが、その指示以降に学んだことで、誰かにそのやり方を容易に説明することができないものはすべて潜在記憶です。
潜在的なプライミングは、もう1つの種類の潜在記憶です(Schacter, 1992)。プライミングでは、ある刺激にさらされると、それ以降の刺激に対する反応に影響を与えます。刺激はさまざまなものであり、反応を引き出したり、認識を高めたりするような言葉、絵、その他の刺激が含まれることがあります。たとえば、ある人々はピクニックが大好きです。彼らは自然の中に入って、地面にブランケットを敷いて、おいしいものを食べるのが好きなのです。さて、次の文字を並べ替えて、単語を作ってください。
\[ \rm AETPL \]
あなたはどんな単語を思いつきましたか?おそらく「お皿(plate)」ではないでしょうか。
もしあなたが、「ある人々は、花を育てるのが大好きです。彼らは庭に出て、植物に肥料をやり、花に水をやるのが好きなのです」と読んでいたとしたら、あなたはおそらく「お皿(plate)」ではなく「花びら(petal)」という単語を思いついたことでしょう。
先ほどの意味ネットワークについての議論を覚えていますか?人々がピクニックについて読んだ後に「お皿」を思いつきやすい理由は、お皿がピクニックと関連して(結びついて)いるからです。意味ネットワークを活性化することにより、お皿がプライミングされました。同様に、「花びら」は花と結びついており、花によってプライミングされます。あなたがおそらくピーナッツバターに反応してゼリーと言ったのもプライミングのためです。
潜在的な感情的条件付けとは、古典的に条件付けられた感情反応が関わる記憶のタイプです(Olson & Fazio, 2001)。このような感情的な関係性は、報告したり思い出したりすることはできませんが、さまざまな刺激に関連付けることができます。たとえば、特定の匂いが人によっては特定の感情的な反応を引き起こすことがあります。もし親しみ深く郷愁を誘う気分にさせてくれる匂いがあって、その反応がどこから来るのかわからない場合、それが潜在的な感情的反応です。同様に、ほとんどの人は特定の感情反応を引き起こす曲を持っています。その曲の効果は、潜在的な感情記憶である可能性があります(Yang, Xu, Du, Shi, & Fang, 2011)。
日常へのつながり
あなたは、今までにしたこと、言ったことを全部覚えていますか?
エピソード記憶は自伝的記憶とも呼ばれます。それでは早速、あなたの自伝的記憶を試してみましょう。5年前の今日、あなたはどんな服を着ていましたか?2009年4月10日の昼食は何を食べましたか?あなたはおそらく、これらの質問に答えるのが、不可能ではないにしろ、難しいと思うでしょう。あなたは、食事や会話、服の選択、天候状況など、人生で経験したすべての出来事を覚えることができるでしょうか?十中八九、私たちの中でこの質問にほんのわずかでも答えることができる人などいないでしょう。しかしながら、テレビ番組『タクシー』で有名なアメリカの女優マリル・ヘナーは、記憶することができます。彼女は、驚くほど優れた自伝的記憶力を持っています(図8.7)。
このように出来事を思い出すことができる人は非常に少なく、現在、この能力があると確認されているのは20人以下で、ほんの数人しか研究されていません(Parker, Cahill & McGaugh 2006)。また、ハイパーサイメシアは通常、青年期に現れますが、米国では2人の子供が10歳の誕生日のかなり前からの記憶を持っているようです。
学習へのリンク
テレビのニュース番組『60ミニッツ』による優れた自伝的記憶(http://openstax.org/l/endlessmem)についてのビデオを見て、さらに学んでください。
検索
あなたは、来るべき最終試験のために、重要な情報を(労力を要する処理によって)符号化し、貯蔵するために懸命に取り組んできました。あなたが必要なときに、その情報を貯蔵庫から取り出すにはどうしたらよいのでしょうか?情報を記憶の貯蔵庫から取り出し、意識的な認識の中に戻す行為は、検索として知られています。これは、あなたのコンピュータのハードドライブに保存していた論文を見つけて開くことに似ています。するとそれは、デスクトップに戻ってきて、あなたはそれに対して再び作業をすることができます。長期記憶から情報を取り出す能力は、私たちが日常生活を送る上で非常に重要です。あなたは、髪の毛のとかし方や歯の磨き方から、車での通勤、職場についた後での仕事の進め方に至るまで、あらゆることを行うために、記憶から情報を取り出すことができなければなりません。
あなたが長期記憶の貯蔵システムから情報を取り出すことのできる3つの方法があります:それは、再生、再認、および再学習です。再生は、私たちが記憶の検索について話すときに、最もよく思い浮かべるものです:それは、あなたが手がかりなしに情報にアクセスできることを意味しています。たとえば、あなたは小論文のテストでは、再生を使うことになるでしょう。再認は、あなたが以前に学んだ情報に再び遭遇した際に、その情報を特定するときに起こります。これは、比較のプロセスを伴います。多肢選択式のテストを受けるときは、あなたは正しい答えを選ぶために再認に頼っています。別の例を挙げてみましょう。10年前に高校を卒業したあなたが、10年目の同窓会のために地元に戻ってきたとしましょう。あなたはすべての同級生を思い出すことはできないかもしれませんが、卒業アルバムの写真に基づいて多くの同級生を再認識します。
検索の3つ目の形態は、再学習です。これは聞いたままのものであり、あなたが以前に学んだ情報を学習することです。ホイットニーは高校でスペイン語を習いましたが、高校卒業後はスペイン語を話す機会がありませんでした。現在31歳となったホイットニーは、会社からメキシコシティーのオフィスで働く機会を提示されました。準備のために、彼女は地元のコミュニティーセンターでスペイン語コースを受講します。彼女は、13年間もの間その言語を話すことはなかったのに、すぐに言葉を覚えられることに驚きました。これは、再学習の一例です。
8.2 記憶をつかさどる脳の部位
学習目標
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
- 記憶に関わる脳の機能を説明する
- 海馬、扁桃体、および小脳の役割を認識する
記憶は脳の一部分にしか保存されていないのでしょうか?それとも脳のさまざまな部分に保存されているのでしょうか?今から約100年前、カール・ラシュレーは、ラットやサルなどの動物の脳に損傷を負わせることによって、この問題を探り始めました。彼は、エングラム(「記憶の物理的表現」として機能するニューロンのグループ)の証拠を探していました(Josselyn, 2010)。ラシュレー(Lashley, 1950)はまず、ラットが迷路を通り抜けるように訓練しました。そして、当時に利用可能であった道具(この場合は、はんだごて)を使って、ラットの脳、特に大脳皮質に損傷を作り出しました。彼は、ラットが迷路から得た元の記憶痕跡(エングラム)を消去するためにこれを行いました。
ラシュレーはエングラムの証拠を見つけられませんでした。ラットは損傷の大きさや場所に関係なく、依然として迷路を通り抜けることができました。ラシュレーは損傷の作成と動物の反応に基づいて、記憶に関わる脳のある領域が損傷しても、同じ領域の別の部位がその記憶機能を引き継ぐことができるという等能力性仮説を立てました(Lashley, 1950)。ラシュレーの初期の研究ではエングラムの存在は確認されませんでしたが、現代の心理学者はエングラムの所在を明らかにすることにおいて進歩を遂げつつあります。たとえば、エリック・カンデルは何十年もかけて、シナプスと、記憶の保存に必要な神経回路を通じた情報の流れを制御する際におけるシナプスの役割を研究しています(Mayford, Siegelbaum, & Kandel, 2012)。
多くの科学者は、脳全体が記憶に関わっていると考えています。しかしながら、ラシュレーの研究以降、他の科学者たちは、脳と記憶をより詳細に観察することができるようになりました。彼らは、記憶が脳の特定の部分に位置し、特定のニューロンが記憶の形成に関与していることが認識されたと主張しています。記憶に関わる脳の主な部位は、扁桃体、海馬、小脳、前頭前皮質です(図8.8)。
扁桃体
まず、記憶形成における扁桃体の役割を見てみましょう。扁桃体の主な仕事は、恐怖や攻撃性などの感情を調節することです(図8.8)。扁桃体は、記憶の保存方法において役割を持っています。なぜなら、記憶の貯蔵はストレスホルモンの影響を受けるからです。たとえば、ある研究者は、ラットを使って恐怖反応の実験を行いました(Josselyn, 2010)。パブロフの条件付けを用いて、中性の音とラットの足への衝撃がペアにされました。これにより、ラットは恐怖の記憶を持つようになりました。条件付けされた後、ラットは音を聞くたびに凍りつき(ラットの防御反応)、差し迫った衝撃に対する記憶を示すようになりました。次に、研究者たちは、恐怖の記憶をつかさどる脳の特定の領域である外側扁桃体のニューロンの細胞死を引き起こしました。彼らは、恐怖の記憶が薄れた(消去された)ことを見出しました。扁桃体は、感情的な情報を処理する役割を担っているため、記憶固定化にも関与しています。記憶固定化とは、新しい学習を長期記憶に移すプロセスです。扁桃体は、感情的に興奮させる出来事があった場合、より深いレベルでの記憶の符号化を促進するようです。
学習へのリンク
この「マウス・レーザービーム・操作された記憶」というTEDトーク(http://openstax.org/l/mousebeam)では、MITのスティーブ・ラミレスとシュウ・リュウが、レーザービームを使ってラットの恐怖の記憶を操作することについて話しています。彼らの研究がサイエンス誌に掲載されとすぐさまメディアを騒がせることとなった理由を見つけてください。
海馬
別の研究者のグループは、海馬が記憶処理においてどのように機能するかを知るために、ラットを使って実験を行いました(図8.8)。彼らはラットの海馬に損傷を作り出し、物体認識や迷路走行などのさまざまな課題でラットに記憶障害が見られたことを発見しました。彼らは、海馬が記憶、特に通常の認識記憶と空間記憶(記憶課題が再生テストのような場合)に関与していると結論付けました(Clark, Zola, & Squire, 2000)。海馬のもう1つの仕事は、記憶に意味を与え、他の記憶と結びつける情報を皮質領域に投射することです。また、海馬は、新しい学習を長期記憶に移すプロセスである記憶固定化でも役割を果たしています。
この領域が損傷を受けると、私たちは新しい宣言的記憶を処理できなくなります。H.M.としてのみ知られているある有名な患者は、長年患っていた発作を抑えるために、左右の側頭葉(海馬)を切除しました(Corkin, Amaral, González, Johnson, & Hyman, 1997)。その結果、彼の宣言的記憶は大きく影響を受け、新しい意味的知識を形成することができなくなりました。彼は新しい記憶を形成する能力を失いましたが、手術前に起こった情報や出来事はまだ覚えていました。
小脳と前頭前皮質
海馬はどちらかというと顕在記憶を処理する領域のようですが、あなたは海馬を失ってもなお、小脳のおかげで潜在記憶(手続き的記憶、運動学習、および古典的条件付け)を作ることができます(図8.8)。たとえば、古典的条件付けの実験の1つに、被験者の目に空気を一吹きするとまばたきをするように慣らすというものがあります。研究者がウサギの小脳を損傷させたところ、ウサギは条件付けられた目のまばたきの反応を学習できないことがわかりました(Steinmetz, 1999; Green & Woodruff-Pak, 2000)。
他の研究者は、陽電子放出断層撮影法(PET)スキャンなどの脳スキャンを用いて、人がどのように情報を処理し、保持しているのかを調べました。これらの研究から、前頭前皮質が関与しているようだということがわかりました。ある研究では、参加者に2つの異なる課題を課しました:それは、単語の中から「a」の文字を探す課題(知覚的課題と考えられます)と、名詞を生物と非生物に分類する課題(意味的課題と考えられます)です(Kapur et al., 1994)。その後、参加者に、どの単語を以前に見たことがあるかを尋ねました。知覚的課題よりも意味的課題の方が、はるかによく再生されました。PETスキャンによると、意味的課題では、左下前頭前皮質の活性化が非常に多く見られました。別の研究では、符号化は左前頭の活動と関連しており、情報の検索は右前頭領域と関連していました(Craik et al., 1999)。
神経伝達物質
記憶のプロセスには、エピネフリン、ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸、アセチルコリンなどの特定の神経伝達物質も関与しているようです(Myhrer, 2003)。どの神経伝達物質がどのような特定の役割を果たしているかについては、研究者の間で議論や論争が続いています(Blockland, 1996)。それぞれの神経伝達物質が記憶においてどのような役割を果たしているのかはまだわかっていませんが、神経伝達物質を介したニューロン間の通信が新しい記憶の形成において重要であることはわかっています。神経細胞が繰り返し活動することで、シナプス内の神経伝達物質が増加し、より効率的でより多くのシナプス結合へとつながります。このようにして記憶固定化が起こります。
また、強い感情が引き金となって強い記憶が形成され、弱い感情的経験は弱い記憶を形成すると考えられています。これは覚醒理論と呼ばれています(Christianson, 1992)。たとえば、強い感情的な経験は、記憶を強化する神経伝達物質やホルモンの放出を引き起こすことがあります。したがって、通常は、感情的な出来事の記憶は、感情的でない出来事の記憶よりもよいです。人間や動物がストレスを受けると、脳内で神経伝達物質のグルタミン酸が多く分泌され、ストレスを受けた出来事を記憶するのに役立ちます(McGaugh, 2003)。これは、フラッシュバルブ記憶現象として知られるものではっきりと証明されています。
フラッシュバルブ記憶とは、重要な出来事を例外的にはっきりと思い出すことです(図8.9)。歴史的に重大な出来事を経験した人の多くは、自分がどこにいて、どのようにしてそれについて聞いたのかを正確に覚えています。たとえば、ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center, 2011)の調査では、9/11テロリスト攻撃の当時に8歳以上だったアメリカ人の97%が、事件から10年経った後でも事件を知った瞬間を覚えているということがわかりました。
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不正確な記憶と虚偽記憶
重要な出来事についてのフラッシュバルブ記憶であっても、時間が経つと正確さが失われることがあります。たとえば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、9月11日のテロリストの攻撃をどのように知ったかという質問に対して、少なくとも3つの場面で、不正確な回答をしています。2002年1月、その攻撃から4か月も経たないうちに、当時現職のブッシュ大統領は、その攻撃をどのように知ったかと聞かれ、次のように答えました:
私はそこに座っていて、私の首席補佐官が……そうですね、まず私たちが教室に入ったとき、私は飛行機が最初のビルに向かって飛んでいくのを見ていました。テレビがついていましたからね。それで、私はパイロットのミスだと思いましたが、こんなひどいミスをする人がいるのかと驚きました。(Greenberg, 2004, p. 2)
ブッシュ大統領の発言に反して、ツインタワー近くの地上にいた人以外は誰も最初の飛行機の衝突を見ていませんでした。最初の飛行機が衝突するまでは、普通の火曜日の朝だったので、最初の飛行機のビデオ映像は記録されませんでした。
記憶はビデオ記録のようなものではありません。人間の記憶は、たとえフラッシュバルブ記憶であっても、もろいものです。時間、視覚的要素、および匂いなど、記憶のさまざまな部分が異なる場所に貯蔵されています。何かを思い出すときには、これらの構成要素を元に戻して完全な記憶にしなければなりません。これは、記憶の再構成として知られています。それぞれの構成要素では、誤りが生じる可能性があります。虚偽記憶とは、起こってもいないことを思い出すことです。研究参加者は、ある言葉を聞いたことがないにもかかわらず、その言葉を聞いたことを思い出したことがあります(Roediger & McDermott, 2000)。
あなたが歴史的な、あるいはおそらく悲劇的な出来事について聞いたとき、あなたがどこにいたか覚えていますか?あなたは誰と一緒にいて、何をしていましたか?何を話していましたか?一緒にいた人たちと連絡を取ることはできますか?彼らはあなたと同じ記憶を持っていますか?それとも違う記憶を持っていますか?
8.3 記憶の問題点
学習目標
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
- 2つの種類の健忘症を比較対照する
- 目撃証言の信頼性の低さを議論する
- 符号化の失敗について議論する
- さまざまな記憶の誤りについて議論する
- 2つの種類の干渉を比較対照する
あなたは、友人や家族の生年月日や年齢を覚えているという素晴らしい能力について自慢に思っているかもしれませんし、チャック・E・チーズのお店での5歳の誕生日パーティーの詳細を鮮明に思い出すことができるかもしれません。しかしながら、誰でも、記憶が間違っていたために、イライラしたり、恥ずかしい思いをしたりしたことがあるはずです。そのようなことが起こるのにはいくつかの理由があります。
健忘症
健忘症(記憶喪失)とは、病気、身体的外傷、または心理的外傷の結果として起こる長期記憶の喪失です。トロント大学のエンデル・タルヴィング(Tulving, 2002)と彼の同僚は、K.C.を何年にもわたって研究しました。K.C.はバイク事故で頭部に外傷を負った後、重度の健忘症になりました。タルヴィングはこう書いています
K.C.の精神構造についての際立った事実は、彼が自分の人生のいかなる出来事、状況、または場面も全く覚えていないことである。彼のエピソードの健忘症は、生まれてから現在に至るまでの全人生をカバーしている。唯一の例外は、ある瞬間において、その前の1、2分の間に彼が経験したことだけである。(Tulving, 2002, p. 14)
前向性健忘
健忘症には、前向性健忘と逆向性健忘の2つの一般的なタイプがあります(図8.10)。前向性健忘は、一般に、頭に衝撃を受けるなどの脳外傷によって引き起こされます。前向性健忘では、新しい情報を覚えることができませんが、怪我をする前に起こった情報や出来事は覚えています。通常、海馬が影響を受けています(McLeod, 2011)。これは、脳の損傷により、短期記憶から長期記憶への情報伝達ができなくなったこと、つまり記憶の固定化ができなくなったことを示唆しています。
この形態の健忘症の人の多くは、新しいエピソード記憶や意味記憶を形成することができませんが、新しい手続き的記憶を形成することはできます(Bayley & Squire, 2002)。これは、先に述べたH.M.の場合にも当てはまりました。彼は、手術により引き起こされた脳の損傷により、前向性健忘になりました。H.M.は同じ雑誌を何度も読み返していましたが、それを読んだ記憶はなく、その雑誌はいつも彼にとって新しいものでした。また、彼は手術後に会った人のことも記憶することができませんでした。もしあなたがH.M.から自己紹介され、それから数分の間部屋を離れると、戻ってきたときにはあなたはH.M.にとって知らない人になっており、彼はまた自己紹介をするでしょう。しかしながら、同じパズルを数日続けて提示すると、彼は以前に見たことを思い出せないにもかかわらず、解くスピードが日ごとに速くなっていきました(再学習のため)(Corkin, 1965, 1968)。
逆向性健忘
逆向性健忘とは、外傷の以前に起こった出来事の記憶が失われることです。逆向性健忘の人は、自分の過去の一部または全部を思い出すことができません。彼らは、エピソード記憶を思い出すことが困難です。ある日、あなたが病院で目を覚ますと、ベッドの周りにいる人たちが、あなたの配偶者や子供、両親だと名乗ったとしたらどうでしょうか?困ったことに、あなたは彼らの誰にも見覚えがありません。あなたは交通事故に遭い、頭に傷を負って逆向性健忘になっています。あなたは病院で目を覚ます前の人生を何も覚えていないのです。これはまるで、ハリウッド映画の話だと思うかもしれません。そして、ハリウッドは、1915年の映画『嘘の園』のようなずっと昔にさかのぼるものから、スパイ映画の『ジェイソン・ボーン』のような最近の映画まで、1世紀近くにわたって健忘症という筋立てに魅了されてきました。しかしながら、元NFLフットボール選手のスコット・ボルザンのように、実際に逆向性健忘を患っている人にとっては、話はハリウッド映画ではありません。ボルザンは、転倒して頭を打ち、一瞬にして46年間の人生を失ってしまいました。彼は、記録に残る最も極端な症例の逆向性健忘を抱えて暮らしています。
学習へのリンク
スコット・ボルザンの健忘症と人生を取り戻そうとする試みについてのビデオストーリー(http://openstax.org/l/bolzan)を見て、さらに学んでください。
記憶の構成と再構成
新しい記憶を形成することを構成と呼ぶことがあり、古い記憶を呼び起こすプロセスを再構成と呼ぶことがあります。しかし、私たちは記憶を取り出す際に、その記憶を変えたり修正したりする傾向があります。長期の貯蔵庫から引き出されて短期記憶に入れられた記憶は、柔軟性があります。新しい出来事が追加されることもあれば、私たちが過去の出来事について自分が覚えていると思っていることを変更することもあり、不正確さや歪みが生じます。人々は事実を歪めようとは意図していないかもしれませんが、それは古い記憶を取り出して新しい記憶と組み合わせる過程で起こり得ます(Roediger & DeSoto, 2015)。
被暗示性
誰かが犯罪を目撃したとき、犯罪の詳細についてのその人の記憶は、容疑者を捕まえる上で非常に重要です。記憶は非常に脆弱であるため、被暗示性の問題により、目撃者は簡単に(そしてしばしば、知らず知らずのうちに)誤った方向に導かれる可能性があります。被暗示性とは、外部の源からの誤った情報により、虚偽記憶が作られてしまう効果のことを言います。2002年の秋、ワシントンDCの地域では、ある狙撃者が、ガソリンスタンドにいる人、ホームデポのお店を出た人、道を歩いている人などを狙撃する事件が発生しました。これらの攻撃は3週間以上にわたってさまざまな場所で行われ、10名の人が亡くなりました。この間、あなたが想像できるように、人々は家を出ることも、買い物に行くことも、近所を歩くことさえも恐れました。警察官とFBIは事件解決のために必死に働き、情報提供ホットラインが設置されました。法執行機関には14万件以上の情報が寄せられ、その結果、約3万5千人の見込みのある容疑者が浮上しました(Newseum, n.d.)。
ほとんどの情報は行き詰まりましたが、1つの銃撃事件の現場で白いバンが目撃されました。警察署長は、その白いバンの写真を持って全国ネットのテレビに出ました。記者会見の後、他にも何人かの目撃者から、自分も銃撃現場から白いバンが逃げるのを見たという電話がありました。当時、その地域には白いバンは7万台以上もありました。警察官も一般市民も、この目撃者たちの証言を信じたために、ほとんど白いバンにしか注目しませんでした。それ以外の情報は無視されました。最終的に容疑者たちが捕まったとき、彼らは青いセダンを運転していました。
この例で示されるように、私たちはニュースで見た何かに基づくだけで、暗示の力に対して脆弱になります。また、私たちは、実際には誰かが暗示しただけのことを、覚えていると言い張ることができます。虚偽記憶の原因は、暗示にあります。
目撃者の誤認
記憶や再構成のプロセスが脆弱であるにもかかわらず、警察官、検察官、裁判所は、犯罪者を起訴する際に、しばしば目撃者の人物特定や証言に頼ります。しかしながら、目撃者の人物特定や証言に誤りがあると、誤った有罪判決が下されることがあります(図8.11)。
これはどのようにして起こるのでしょうか?1984年、ノースカロライナ州の22歳の大学生だったジェニファー・トンプソンは、ナイフを突きつけられて残酷にレイプされました。彼女はレイプされている間、レイプ犯の顔や身体的特徴をすべての細部まで記憶しようとし、もし生き残ったならば、彼を有罪にする手助けをすると心に決めました。警察に連絡すると、容疑者の似顔絵が作成され、ジェニファーは6枚の写真を見せられました。彼女は2枚を選び、そのうちの1枚はロナルド・コットンのものでした。4~5分ほど写真を見た後、彼女は「そう。これです」と言い、さらに「これが、あの男だと思う」と付け加えました。このことについて、刑事が、「あなたは確信を持っていますか?疑いようがない?」と尋ねると、彼女はこの人だと答えました。そして、彼女は刑事に対して自分はうまくできたかと尋ねると、刑事はよくやったと言って彼女の選択を補強しました。警察官によるこのような意図しない合図や暗示は、目撃者に誤った容疑者を特定させてしまう可能性があります。地方検事は、彼女が一度目に見たときに確信が持てなかったことを懸念して、7人の男性を並ばせて彼女に見せました。彼女は、4番と5番のどちらに決めるか悩んでいると言い、最終的に5番のコットンに決め、「あの男に最も似ている」と言いました。彼は22歳でした。
裁判が始まる頃までには、ジェニファー・トンプソンは、自分がロナルド・コットンによってレイプされたことを全く疑わなくなっていました。彼女は法廷尋問で証言し、その証言は彼を有罪にするのに十分な説得力を持っていました。彼女は、どのようにして、「これが、あの男だと思う」、「あの男に最も似ている」という状態から、そのような確信に至ったのでしょうか?ゲイリー・ウェルズとディア・クインリヴァン(Wells & Quinlivan, 2009)は、警察の暗示的な身元確認方法が原因だと主張しています。それは、たとえば、被告を目立たせるようにして列に並べたり、目撃者にどの人物を特定するかを指示したり、目撃者の選択を支持するために「いい選択だ」や「君はまさにこいつを選んだ」と言ったりするものです。
コットンはレイプ事件で有罪判決を受けた後、終身刑に加えて50年の刑期を課せられました。4年間の刑期の後、彼は再審を受けることができました。ジェニファー・トンプソンは再び彼に不利な証言をしました。今度はロナルド・コットンに2つの終身刑が下されました。11年間の服役の後、DNAの証拠により、ロナルド・コットンはレイプをしておらず、無実であり、犯していない罪で10年以上も服役していたことがようやく証明されました。
学習へのリンク
誤って有罪であるとされたロナルド・コットンについての1つ目のビデオ(http://openstax.org/l/Cotton1)と、彼を告訴した人の仕事についての2つ目のビデオ(http://openstax.org/l/Cotton2)を見て、記憶の誤りやすさについてさらに学んでください。
ロナルド・コットンの話は、残念ながら唯一のものではありません。有罪判決を受けて死刑囚になった人でも、後に無罪となった人もいます。イノセンス・プロジェクトは、目撃者の証言によって有罪となった人を含め、誤って有罪とされた人々の潔白を証明するために活動する非営利団体です。さらに詳しく知りたい場合、http://www.innocenceproject.orgを訪れてみてください。
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目撃者の記憶を保存する:エリザベス・スマート事件
コットンの事件とエリザベス・スマートの事件で起きたこととを対比してみましょう。エリザベスが14歳のとき、自宅のベッドでぐっすり眠っていると、彼女はナイフを突きつけられて誘拐されました。9歳の妹、メアリー・キャサリンは同じベッドで寝ていて、大好きな姉が誘拐されるのを見て、恐れました。メアリー・キャサリンは、この犯罪の唯一の目撃者であり、非常に恐怖を感じていました。それからの数週間、ソルトレークシティーの警察とFBIは、メアリー・キャサリンに注意を払いながら仕事を進めました。彼らは、どのような形であっても彼女に虚偽記憶を植え付けたり、誤った方向に導いたりしたくはありませんでした。彼らは、警察で人が列に並んだところを見せたり、誘拐犯の似顔絵を描けと迫ることもしませんでした。彼らは、彼女の記憶を壊してしまえば、エリザベスが見つからなくなるかもしれないということをわかっていました。数か月間、事件はほとんど、あるいはまったく進展しませんでした。そして、誘拐事件から4か月後、メアリー・キャサリンは、あの夜以前に誘拐犯の声を聞いたことがあると初めて思い出しました(その男は、ただ1日だけ、便利屋としてその家族の家で働いたことがありました)。彼女は、その声が誰のものであるかを告げることができました。家族は報道機関に連絡し、他の人も彼のことを認識しました。合計して9か月後、容疑者は逮捕され、エリザベス・スマートは家族の元へと戻りました。
誤情報効果
認知心理学者のエリザベス・ロフタスは、記憶に関する幅広い研究を行っています。彼女は、虚偽記憶や、幼少期の性的虐待についての記憶の回復について研究してきました。また、ロフタスは誤情報効果パラダイムを開発しました。これは、追加の、そして不正確であり得る情報にさらされた後、人は元の出来事を間違って思い出すというものです。
ロフタスによれば、目撃者の出来事の記憶は誤情報効果のために非常に柔軟なものになります。この理論を検証するために、ロフタスとジョン・パーマー(Loftus & Palmer, 1974)は、米国の大学生45人に、さまざまな形式の質問を使って車の速度を推定してもらいました(図8.12)。また、参加者に交通事故の映像を見せて、目撃者の役割をさせ、起こったことを説明してもらいました。彼らには、「車同士が(激突した、衝突した、ぶつかった、当たった、接触した)とき、その車はどのくらいの速度で走っていましたか?」と質問がされました。参加者は、使われた動詞に基づいて、車の速度を推定しました。
「激突した」という言葉を聞いた参加者は、「接触した」という言葉を聞いた参加者よりも、はるかに速い速度で車が走っていたと推定しました。聞いた動詞に基づく速度に関する暗黙の情報が、参加者の事故の記憶に影響を与えました。1週間後の追跡調査では、参加者に割れたガラスを見たかどうかを尋ねました(事故の写真にはまったく映っていませんでした)。「激突した」グループに属していた参加者は、ガラスを見たことを覚えていると答える割合が2倍以上になりました。ロフタスとパーマーは、誘導的な尋問によって、車がより速く走っていたことを思い出すだけでなく、割れたガラスを見たと偽って思い出すように仕向けられたことを示しました。
抑圧された記憶と回復された記憶をめぐる論争
他の研究者は、言葉だけでなく出来事全体が、起こっていないにもかかわらず、どのようにして誤って思い出されることがあるかについて記述しています。トラウマ的な出来事の記憶が抑圧されることがあるという考え方は、ジークムント・フロイトに始まる心理学の分野でのテーマであり、この考え方をめぐる論争は現在も続いています。
偽の自伝的記憶を想起することは、虚偽記憶症候群と呼ばれます。この症候群は、特に、独立した目撃者がいない出来事(しばしば、虐待の目撃者は加害者と被害者だけです(たとえば、性的虐待))の記憶に関連しているため、大きな注目を集めています。
この論争の一方には、虐待が起きてから何年も経ってから、小児虐待の記憶を回復させたという人たちがいます。これらの研究者は、一部の子供たちの経験があまりにもトラウマを引き起こすものであり、苦痛であったために、彼らが普通の生活にいくらか見せかけたものを送るためには、その記憶を封じ込めなければならなかったと主張しています。彼らは、抑圧された記憶は何十年もの間閉じ込められ、後に催眠や誘導イメージ法によって完全なままに呼び起こすことができると考えています(Devilly, 2007)。
調査では、子供の頃の性的虐待の記憶がないというのは、大人でもかなり一般的であるということが示唆されています。たとえば、ジョン・ブリエレとジョン・コンテ(Briere & Conte, 1993)が行ったある大規模な研究では、18歳以前に起きた性的虐待の治療を受けていた450人の男女のうち、59%がその経験を忘れていたことが明らかにされました。ロス・チェイト(Cheit, 2007)は、これらの記憶を抑圧することが、大人になってからの心理的苦痛を生むことを示唆しています。リカバード・メモリー・プロジェクトは、児童期の性的虐待の被害者がこれらの記憶を思い出し、治癒のプロセスを始めることができるようにするために作られました(Cheit, 2007; Devilly, 2007)。
もう一方の側で、ロフタスは、個人が性的虐待を含む幼少期のトラウマ的な出来事の記憶を抑圧し、後年になって催眠、誘導的な可視化、年齢退行などの治療技術を用いてその記憶を回復することができるという考え方に異議を唱えています。
ロフタスは、幼少期の性的虐待が起こらないと言っているわけではなく、それらの記憶が正確であるかどうかに疑問を呈しています。また、彼女は、セラピストのわずかな暗示でも誤情報効果につながり得ることを踏まえ、これらの記憶にアクセスするために使われる質問のプロセスにも懐疑的です。たとえば、研究者のスティーブン・セシとマギー・ブラックス(Ceci & Brucks, 1993, 1995)は、3歳の子供たちに、解剖学的に正しい人形を使って、小児科医が診察中にどこを触ったかを示すように頼みました。子供たちのうち55%が、いかなる形態の性器の検査を受けていないときであっても、人形の性器/肛門の領域を指し示しました。
1970年代にロフタスが目撃者の証言の被暗示性に関する最初の研究を発表して以来、社会科学者、警察官、セラピスト、および法曹関係者は、インタビューのやり方に欠陥があることを認識してきました。その結果、目撃者の被暗示性を低減させるための手段がとられるようになりました。1つの方法は、証人への質問の仕方を変えることです。面接担当者が中立的でより誘導的でない言葉を使うと、子供たちは何が起こったのか、誰が関与していたのかをより正確に思い出します(Goodman, 2006; Pipe, 1996; Pipe, Lamb, Orbach, & Esplin, 2004)。もう1つの変化は、警察での面通しのやり方です。ブラインドによる写真での面通しを行うことが推奨されています。この方法では、面通しを担当する人は、どの写真が容疑者のものであるかを知らないので、誘導的な手がかりを与えてしまう可能性を最小限に抑えることができます。また、現在いくつかの州では、裁判官が陪審員に誤認の可能性を伝えています。また、裁判官は、目撃者の証言が信頼できないと判断した場合、その証言を抑えることができます。
忘却
ロバート・ルイス・スティーヴンソンは、「私は忘れることについては素晴らしい記憶を持っている」と冗談を言いました。忘却とは、長期記憶から情報が失われることです。私たちは誰でも、愛する人の誕生日、誰かの名前、車の鍵をどこに置いたかなど、いろいろなことを忘れてしまいます。あなたもお分かりのように、記憶とは脆いものであり、忘れることは苛立たしく、恥ずかしいことでもあります。しかし、なぜ私たちは忘れるのでしょうか?この疑問に答えるために、私たちは忘却に関するいくつかの視点から考えていきます。
符号化の失敗
実際の記憶プロセスが始まる前に記憶の喪失が起こることがありますが、これは符号化の失敗です。私たちは、そもそも記憶の中に何かを保存していなければ、それを思い出すことはできません。これは、実際には購入もダウンロードもしていない本を電子書籍リーダーで探そうとするようなものです。しばしば、何かを思い出すためには、私たちは細部にまで注意を払い、積極的に情報を処理するために取り組まなければなりません(労力を要する符号化)。多くの場合、私たちはこれを行いません。たとえば、あなたが人生の中で1セント銅貨を何回見たか考えてみてください。あなたは、アメリカの1セント銅貨の表面がどのようになっているか、正確に思い出すことができますか?研究者のレイモンド・ニッカーソンとマリリン・アダムス(Nickerson & Adams, 1979)がこの質問をしたところ、ほとんどのアメリカ人がどれかわからないことを発見しました。その理由は、符号化の失敗である可能性が高いです。ほとんどの人は、1セント銅貨の詳細を符号化しません。私たちは、他のコインと区別できる程度の情報を符号化するだけです。もし私たちが情報を符号化しなければ、その情報は長期記憶にないので、私たちはそれを思い出すことができません。
記憶の誤り
記憶の研究で有名な心理学者ダニエル・シャクター(Schacter, 2001)は、私たちの記憶が失敗する7つの方法を提示しています。彼はこれらのことを記憶の7つの過ちと呼び、忘却、歪曲、侵入という3つのグループに分類しています(表8.1)。
忘却の誤りにおける第一の過ち:一時性について見てみましょう。これは、時間の経過とともに記憶が薄れてしまうことを意味しています。これがどのようにして起こるかの例を挙げてみましょう。ネイサンの英語の先生は、生徒たちに小説『アラバマ物語』を読むように宿題を与えました。ネイサンは学校から帰ってきて、お母さんに授業のためにこの本を読まなければならないと伝えます。お母さんは「ああ、その本は大好きだったわ!」と言います。ネイサンがその本の内容を尋ねると、彼女は少しためらった後、「そうね、その本を読んだのは高校生の時だったわ。主人公の1人がスカウトという名前で、彼女の父親が弁護士だということは覚えているけど、正直言ってそれ以外は何も覚えていないの」。ネイサンは母親が本当にその本を読んだのか疑問に思い、母親は筋書きを思い出せないことに驚いています。ここで起こっているのは、記憶の減衰です:使われていない情報は、時間の経過とともに薄れていく傾向があります。
1885年、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、記憶のプロセスを分析しました。まず、彼は無意味な音節のリストを記憶しました。それから彼は、それぞれのリストを再学習しようとする際に、どれだけのことを学んでいたか(保持していたか)を測定しました。彼は、自分自身に対して、20分後から30日後までのさまざまな期間にわたってテストを行いました。その結果が、彼の有名な忘却曲線です(図8.14)。貯蔵の減衰により、平均的な人は、20分後には記憶した情報の50%を、24時間後には情報の70%を失うことになります(Ebbinghaus, 1885/1964)。新しい情報に対するあなたの記憶はすぐに減衰し、最終的には横這いになります。
あなたはいつも携帯電話を紛失していますか?ストーブのスイッチを切ったかどうか確認するために車で家に戻ったことがありますか?何かを探しに部屋に入ったのに、それが何だったか忘れてしまったことはありませんか?おそらくあなたは、これらの例のうち、すべてではないにしても、少なくとも1つは「はい」と答えたでしょうが、心配しないでください、あなただけではありません。私たちは皆、注意散漫として知られる記憶の誤りを犯しやすいのです。注意散漫とは、注意が途切れたり、他のことに集中したりすることによって引き起こされる記憶の失敗のことを言います。
心理学者のシンシアは、最近、注意散漫という記憶の誤りを犯したときのことを思い起こしてくれました。
私が裁判所から依頼された心理評価を行っていたとき、裁判所に行くたびに、鍵のかかったドアを開けることができる磁気ストリップ付きの一時的な身分証明書が発行されました。想像できると思いますが、法廷ではこの身分証明書は貴重で重要なものであり、誰も紛失したり、犯罪者に拾われたりすることを望んでいませんでした。一日の終わりに、私は一時的な身分証明書を返却しました。ある日、評価がほぼ終了したとき、娘の保育所から電話があり、娘が病気なので迎えに来てほしいと言われました。インフルエンザが流行している時期だったので、娘の体調がどの程度なのかわからず、私は心配になりました。私はその10分後に評価を終え、書類カバンに荷物を詰め込み、急いで娘の保育所に車を走らせました。娘を車に乗せた後、私は自分が身分証明書を返したのか、それともテーブルの上に置きっぱなしにしていたのかを思い出せませんでした。私はすぐに裁判所に電話して確認しました。その結果、私は身分証明書を返却していたことがわかりました。なぜ私は覚えていなかったのでしょうか?(personal communication, September 5, 2013)
あなたが注意散漫を経験したのはどんなときですか?
「この間『オブリビオン』という映画をストリーミングで見ていたら、あの有名な俳優が出ていたんだよ。あれ、何て名前だったかな?あの、『ショーシャンクの空に』とか『ダークナイト』3部作とか、たくさん映画に出てる人。たしかアカデミー賞もとったと思うけど。え、なんでだろう、彼の顔は頭に浮かぶし、特徴的な声も聞こえるのに、名前がどうしても出てこない!思い出せるまで、ずっと気になりそう!」喉まで情報が出かかっているだけに、このような誤りはとてもイライラするものです。あなたはこのような経験をしたことがありますか?もしそうなら、あなたは貯蔵されている情報にアクセスできない阻害として知られる誤りを犯しています(図8.15)。
今度は、歪曲の3つの誤り:誤帰属、被暗示性、およびバイアスについて見てみましょう。誤帰属は、情報の源を混同したときに起こります。たとえば、アレハンドラがルシアと付き合っていて、一緒にホビットの最初の映画を見たとします。その後、2人は別れ、アレハンドラは他の人と一緒に2本目のホビットの映画を見ました。その年の後半、アレハンドラとルシアは交際を再開します。ある日、2人はホビットの本と映画がどう違うかを話していて、アレハンドラはルシアにこう言いました。「2作目の映画をあなたと一緒に見て、あのすごく怖いところであなたが席から飛び出していったのはおもしろかったわ」。ルシアが戸惑い、そして怒った表情で答えたとき、アレハンドラは自分が誤帰属の誤りを犯したことに気付きました。
もし誰かがテレビ番組を見た直後にレイプの被害に遭ったならどうなるでしょうか?実際のところ被害者が、誤帰属のために、レイプをテレビで見た人のせいにしてしまうことなどあるのでしょうか?これはまさにドナルド・トムソンに起こったことです。
オーストラリア人であり、目撃者についての専門家であるドナルド・トムソンは、テレビの生放送で目撃者の記憶の信頼性の低さについて討論しました。その後、トムソンは逮捕され、面通しの列に並ばされ、被害者からレイプした男だとして特定されました。レイプが起きたのは彼がテレビに出演していた時だったにもかかわらず、警察はトムソンに嫌疑をかけました。警察は、彼がテレビの視聴者のよく見えるところにおり、警察本部長補佐を含む他の討論者と一緒にいたというトムソンのアリバイを否定しました。. . . 最終的に、捜査官は、女性がテレビを見ていた時にレイプ犯が彼女を襲ったということを発見しました。そのテレビ番組は、まさにトムソンが出演していたものでした。結局、当局はトムソンの容疑を晴らしました。女性はレイプ犯の顔をテレビで見た顔と混同していました。(Baddeley, 2004, p. 133)
2つ目の歪曲の誤りは被暗示性です。被暗示性は、やはり虚偽記憶を伴う点で誤帰属と似ていますが、それは違うものです。誤帰属の場合では、あなたは虚偽記憶を完全に自分自身で作り出します。上記のドナルド・トムソンの事例では、被害者がこれを行いました。被暗示性の場合では、セラピストや警察の面接担当者が面接中に目撃者に誘導的な質問をするなど、誰か他の人からの影響を受けます。
また、記憶はバイアスによっても影響を受けることがあります。これが最後の歪曲の誤りです。シャクター(Schacter, 2001)は、あなたの感情や世界観が、過去の出来事の記憶を実際に歪めてしまうことがあると述べています。バイアスにはいくつかの種類があります:
- ステレオタイプ・バイアスには、人種やジェンダーの偏見が関与します。たとえば、アジア系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人の研究参加者に名前のリストを提示したところ、ジャマールやタイロンなどといったアフリカ系アメリカ人の典型的な名前はバスケットボール選手という職業に関連付けるように誤って覚えられる頻度が高く、グレッグやハワードなどといった白人の典型的な名前は政治家という職業に関連付けるように誤って覚えられる頻度が高いという結果が得られました(Payne, Jacoby, & Lambert, 2004)。
- 自己中心的バイアスには、過去の記憶の強化が関与します(Payne et al., 2004)。大きなサッカーの試合で勝利のゴールを決めたのは本当にあなただったのでしょうか、それともあなたはアシストしただけだったのでしょうか?
- 後知恵バイアスは、ある結果が必然的であったと事後的に考えるときに起こります。これは、「自分は最初から分かっていた」という現象です。記憶の再構成という性質が、後知恵バイアスに寄与しています(Carli, 1999)。私たちは、最初から結果を知っていたことを裏付けるような、真実ではない出来事を思い出してしまいます。
あなたは、ある曲が頭の中で何度も流れたことはありませんか?あなたが本当に考えたくもない、トラウマになるような出来事の記憶はどうでしょうか?あなたが何かを思い出し続けていて、「頭から離れない」状態になり、他のことに集中できなくなるように干渉してくることを持続と言います。これは、シャクターによる7つ目の、そして最後の記憶の誤りです。それは、望ましくない記憶、特に不快な記憶を不本意に思い出してしまうため、実際に記憶システムの失敗です(図8.16)。たとえば、あなたが朝の通勤途中に恐ろしい交通事故を目撃し、その場面を思い出し続けてしまうために仕事に集中できないというような場合です。
干渉
記憶の中に情報が貯蔵されているものの、何らかの理由でそれにアクセスできないことがあります。これが干渉として知られるものであり、順向干渉と逆向干渉の2種類があります(図8.17)。あなたはこれまで、新しい電話番号を手に入れたり、新しい住所に引っ越したりしたのに、その直後に以前の(そして間違った)電話番号や住所を伝えてしまったことはありませんか?新しい年が始まったときに、誤って前の年を書いてしまったことはありませんか?これらは、古い情報が新しく学んだ情報の想起を妨げてしまう順向干渉の例です。逆向干渉は、最近学んだ情報が古い情報の想起を妨げるときに起こります。たとえば、あなたは今週は記憶について勉強しており、エビングハウスの忘却曲線について学びます。来週、あなたは生涯発達について勉強し、エリクソンの心理社会的発達の理論について学びますが、その後、エリクソンの理論しか思い出せないために、エビングハウスの研究を思い出すのに苦労します。
8.4 記憶力を高めるための方法
学習目標
この節が終わるまでに、あなたは次のことができるようになります:
- 記憶力を高める戦略を認識し、適用する
- 効果的な学習テクニックを認識し、適用する
ほとんどの人が何らかの形で記憶の失敗に悩まされています。そして、車の鍵をどこに置いたか忘れたりしないように、もっと重要なことには、試験のために知っている必要のある内容を忘れたりしないように、記憶力を高めたいと思っている人は多いでしょう。この節では、私たちは、よりよく記憶するのに役立ついくつかの方法と、より効果的な勉強のための戦略について見ていきます。
記憶力を高める戦略
思い出すことも含めて、私たちの記憶力を高めることのできる何らかの日常的な方法はあるでしょうか?情報を短期記憶から長期記憶へと確実に移すのを助けるために、あなたは記憶力を高める戦略を用いることができます。その戦略の1つがリハーサル、つまり記憶したい情報を意識的に繰り返すことです(Craik & Watkins, 1973)。子供の頃、どのようにして掛け算の表を学んだかを考えてみてください。あなたは、6×6=36、6×7=42、6×8=48と覚えていることでしょう。これらの事実を覚えることがリハーサルです。
もう1つの戦略は、チャンキングです:あなたは、情報を扱いやすいかたまり、つまりチャンクに整理します(Bodie, Powers, & Fitch-Hauser, 2006)。チャンキングは、日付や電話番号などの情報を覚えようとするときに有用です。あなたは、5205550467を覚えようとするのではなく、520-555-0467として番号を覚えておきます。そのため、パーティーで面白い人に出会って、その人の電話番号を覚えようと思ったら、あなたは自然とチャンク化します。そして、あなたはその番号を何度も繰り返して覚えますが、これはリハーサル戦略です。
学習へのリンク
記憶力を高める戦略(http://openstax.org/l/memgame)を採用した楽しいアクティビティーを試して、さらに学んでください。
また、あなたは精緻化リハーサルを用いることによっても記憶力を高めることができます:精緻化リハーサルとは、あなたが新しい情報の意味や、その新しい知識とすでに記憶の中に貯蔵されている知識との関連性を考える手法です(Tigner, 1999)。精緻化リハーサルには、情報をすでに蓄積されている知識と結びつけることと、情報を繰り返すことの両方が含まれます。たとえば、この場合では、あなたは520がアリゾナ州の市外局番であり、あなたが会った人はアリゾナ州出身であると覚えることができます。これは、520という市外局番をよりよく覚えておくのに役立ちます。もしこの情報が保持されれば、それは長期記憶に入ります。
記憶法は、符号化するために情報を整理するのに役立つ記憶の補助手段です(図8.18)。記憶法は、手順、段階、相、ある体系の部分などといった、より大きな情報の中の大きなかたまりを思い出したいときに特に役立ちます(Bellezza, 1981)。ブライアンは、太陽系内の惑星の並び順を覚える必要がありますが、正しい順番を覚えるのに苦労しています。友人のケリーは、彼が覚えるのを助けるような記憶法を提案します。ケリーは、ブライアンに「Mr.VEM J.SUN」という名前を覚えるだけで、惑星の正しい順番を簡単に思い出すことができると言いました:水星(Mercury)、金星(Venus)、地球(Earth)、火星(Mars)、木星(Jupiter)、土星(Saturn)、天王星(Uranus)、海王星(Neptune)。あなたは、人の名前、数式、または演算の順番などを覚えるのに役立てるために、記憶法を使うことがあるでしょう。
テレビ番組『モダン・ファミリー』を見たことがある人は、フィル・ダンフィーが名前を覚える方法を説明しているのを見たことがあるかもしれません。
この間、カール(Carl)という人に会ったんだ。それで、名前を忘れそうになったんだけど、彼はグレイトフル・デッドのTシャツを着ていたんだ。グレイトフル・デッドのようなバンドとは?フィッシュだ。魚はどこに住んでいるか?海だ。海には他に何が住んでいる?サンゴ(Coral)だ。やぁ、コァール(Co-arl)ってわけさ。(Wrubel & Spiller, 2010)
暗記法は、鮮明なもの、珍しいものほど覚えやすいようです。どんな暗記法であったとしても、うまく使うためのコツは、自分に合った戦略を見つけることです。
学習へのリンク
ジョシュア・フォアは、全米記憶力選手権で「うっかり」優勝したサイエンスライターです。「誰でもできる記憶の技」と題して、記憶の宮殿と呼ぶ記憶法を説明する彼のTEDトーク(http://openstax.org/l/foer)を見て、さらに学んでください。
また、記憶力を高めるために使われる他のいくつかの戦略として、筆記開示や言葉を声に出すことがあります。筆記開示は、特に、人生におけるトラウマ的な経験について書く場合に、短期記憶を高めるのに役立ちます。余語真夫と藤原修治(Yogo & Fujihara, 2008)は、月に数回、参加者に20分間隔で文章を書いてもらいました。参加者には、トラウマ的な経験、将来のあり得る最高の自分自身、または些細な話題について書くように指示しました。研究者たちは、この単純な文章作成課題が5週間後に短期記憶能力を増加させたことを発見しましたが、それはトラウマ的な経験について書いた参加者に限られていました。心理学者は、なぜこの筆記課題が有効なのか説明できませんが、それは実際に有効なのです。
もしあなたがお店で買う必要のあるものを覚えておきたいときはどうすればいいでしょうか?単純に、自分に向かって声に出して言ってください。一連の研究(MacLeod, Gopie, Hourihan, Neary, & Ozubko, 2010)によると、ある単語を声に出して言うと、その単語の識別性が高まるため、その単語についての記憶力が向上することが見出されました。適当な食料品を声に出して言うのは馬鹿げていると思いますか?このテクニックは、言葉を声に出さず、口を動かすだけでも同様に効果があります。これらのテクニックを使うことで、参加者の単語の記憶力は10%以上向上しました。これらのテクニックは、あなたの勉強に役立てるために使うこともできます。
効果的な勉強の仕方
ここでは、この章で提示された情報に基づいて、あなたが勉強のテクニックを磨くのに役立つ戦略と提案をいくつか紹介します(図8.19)。いずれの戦略であっても、自分に最も合った方法を見つけ出すことが大切です。
精緻化リハーサルを使う:ファーガス・クレイクとロバート・ロックハート(Craik & Lockhart, 1972)は、有名な論文の中で、私たちがより深く処理した情報は長期記憶に入るという考えについて議論しました。彼らの理論は処理水準と呼ばれています。もし私たちがある情報を覚えておきたいならば、その情報についてより深く考え、それを他の情報や記憶と結びつけて、より意味のあるものにするべきです。たとえば、海馬(hippocampus)が記憶処理に関与していることを覚えようとする場合、記憶力に優れたカバ(hippopotamus)を思い浮かべれば、海馬のことをよりよく覚えられるかもしれません。
自己参照効果を応用する:あなたが精緻化リハーサルの処理を行う際には、記憶しようとしている内容をあなたにとって個人的に意味のあるものにすると、より効果的になるでしょう。言い換えると、自己参照効果を利用するのです。自分自身の言葉でノートを書く。教科書の中の定義を書き出し、自分の言葉で書き直す。内容を他の授業ですでに習ったことと関連付けたり、その概念を自分の生活にどう応用できるかを考えたりする。このようにして、あなたは思い出したいときに内容にアクセスするのに役立つような検索の手がかりの網を構築していきます。
分散練習を行う:一度にすべてを詰め込もうとするのではなく、短時間で区切りつつ長い期間をかけて学習してください。記憶の固定化には時間がかかりますが、長い期間にわたって勉強することで、記憶の固定化に時間をかけることができます。さらに、詰め込み学習をすると、概念間のつながりがあまりにも活発になり、あなたがつながりの中で立ち往生してしまい、学習した残りの情報にアクセスできなくなります。
リハーサル、リハーサル、リハーサル:間隔の空いた、組織的な学習セッションで、時間をかけて内容を見直してください。ノートを整理して勉強し、小テストや模擬試験を受けてください。新しい情報を、すでによく知っている他の情報と結びつけてください。
効率よく勉強する:学生は蛍光ペンをよく使いますが、蛍光ペンで印をつけることは、あまり効率的ではありません。なぜなら、学生はすでに学んだことを勉強するのにあまりにも多くの時間を費やしてしまうことになるからです。蛍光ペンで印をつける代わりに、インデックスカードを使いましょう。片面に問題を書き、もう片面に答えを書きます。勉強するときは、カードを正解したものと間違ったものに分けます。間違えたカードをもう一度勉強して、どんどん分類していきます。最終的には、すべてのカードが正解の山に入ることでしょう。
干渉に注意:干渉の可能性を減らすために、(テレビや音楽などの)妨害や気が散るものがない静かな時間に勉強します。
体を動かす:あなたは当然、運動が体に良いことはすでに知っているでしょうが、運動は心にも良いことを知っていましたか?研究によると、定期的な有酸素運動(あなたの心拍数を上げるようなもの)は記憶力に良いことが示唆されています(van Praag, 2008)。有酸素運動は神経新生を促進します:神経新生とは、記憶や学習において役割を果たす脳の領域である海馬で、新しい脳細胞が成長することです。
十分な睡眠をとる:あなたが眠っている間も、脳は働いています。睡眠中、脳は情報を整理し、固定化して、長期記憶の中に貯蔵します(Abel & Bäuml, 2013)。
記憶法を活用する:あなたがこの章で学んだように、記憶法は情報を覚えたり思い出したりするのにしばしば役立ちます。記憶法には、たとえば頭字語のような、さまざまな種類があります。頭字語とは、覚えたいと望むいくつかの単語から頭文字をとって作った言葉のことです。たとえば、あなたが五大湖の近くに住んでいたとしても、五大湖の名前をすべて思い出すのは難しいかもしれません。では、「HOMES」という言葉を思い浮かべてみてはどうでしょうか?HOMESとは、ヒューロン湖(Huron)、オンタリオ湖(Ontario)、ミシガン湖(Michigan)、エリー湖(Erie)、スペリオル湖(Superior)という五大湖の5つの湖を表す頭字語です。もう1つの記憶法はアクロスティックと呼ばれるもので、いくつかの単語の最初の文字をすべて使って文章を作ります。たとえば、数学のテストで、演算の順番を覚えるのが難しい場合、次のような文章を思い出すと助けになるでしょう:「Please Excuse My Dear Aunt Sally.(私の大好きなサリーおばさんを許してあげて。)」なぜなら、数学の演算の順序は、括弧(Parentheses)、指数(Exponents)、掛け算(Multiplication)、割り算(Division)、足し算(Addition)、引き算(Subtraction)だからです。また、ジングルという韻を踏んだ曲があり、それには概念に関連したキーワードが含まれています。たとえば、「i before e、except after c(eの前はi、cの後は違う)」などです。
重要用語
注意散漫:注意が途切れたり、他のことに集中したりすることによって引き起こされる記憶の失敗
音響的符号化:音、言葉、音楽の入力
健忘症:病気、身体的外傷、または心理的外傷の結果として起こる長期記憶の喪失
前向性健忘:脳外傷の後に起こった出来事の記憶の喪失
覚醒理論:強い感情が引き金となって強い記憶が形成され、弱い感情的経験は弱い記憶を形成する
アトキンソン-シフリンモデル:私たちが感覚記憶、短期記憶、長期記憶という3つのシステムを通じて情報を処理するということを述べる記憶モデル
自動処理:時間、空間、頻度、および言葉の意味などといった情報の詳細を符号化すること
バイアス:感情や世界観が過去の出来事の記憶を歪めること
阻害:貯蔵されている情報にアクセスできなくなる記憶の誤り
チャンキング:情報を扱いやすいかたまり、つまりチャンクに整理すること
構成:新しい記憶を形成すること
宣言的記憶:個人的に経験した事実や出来事についての、長期記憶の一種
労力を要する処理:労力と注意を要する情報の符号化
精緻化リハーサル:新しい情報の意味や、その新しい知識とすでに記憶の中に貯蔵されている知識との関連性を考えること
符号化:記憶システムへの情報の入力
エングラム:記憶の物理的な痕跡
エピソード記憶:私たちが個人的に経験した出来事についての情報を含む宣言的記憶の一種で、自伝的記憶としても知られる
等能力性仮説:脳のある部分は、損傷した部分に代わって記憶の形成と保存を行うことができる
顕在記憶:私たちが意識的に記憶したり、思い出したりする記憶
虚偽記憶症候群:偽の自伝的記憶の想起
フラッシュバルブ記憶:重要な出来事を例外的にはっきりと思い出すこと
忘却:長期記憶から情報が失われること
潜在記憶:私たちの意識の一部ではない記憶
処理水準:より深く考えられた情報は、より意味のあるものとなり、その結果、よりよく記憶に刻まれる
長期記憶(LTM):情報を継続的に貯蔵すること
記憶:異なる期間にわたって情報を符号化し、保存し、取り出すために使われる一連のプロセス
記憶力を高める戦略:情報を短期記憶から長期記憶へと確実に移すのを助けるための手法
誤帰属:情報の源を混同してしまう記憶の誤り
誤情報効果パラダイム:追加の、そして不正確であり得る情報にさらされた後、人は元の出来事を間違って思い出すことがある
記憶法:符号化するために情報を整理するのに役立つ記憶の補助手段
持続:望ましくない記憶、特に不快な記憶を不本意に思い出してしまう記憶システムの失敗
順向干渉:古い情報が新しく学んだ情報の想起を妨げること
手続き的記憶:歯を磨くこと、自転車に乗ること、車を運転することなどの、技能を要する行動を行うための長期記憶の一種
再生:手がかりなしに情報にアクセスすること
再認:以前に学んだ情報に再び遭遇した際に、通常は手がかりに応じて、その情報を特定すること
再構成:古い記憶を呼び起こすプロセスであるが、新しい情報によって歪められる可能性がある
リハーサル:記憶すべき情報を繰り返し行うこと
再学習:以前に学んだ情報を学習すること
検索:情報を長期記憶の貯蔵庫から取り出し、意識的な認識の中に戻す行為
逆向干渉:最近学んだ情報が古い情報の想起を妨げること
逆向性健忘:脳外傷の前に起こった出来事の記憶の喪失
自己参照効果:自分に関連した情報は、自分にあまり関連していない物事に比べると、よりよく記憶できるという傾向
意味的符号化:単語とその意味の入力
意味記憶:単語、概念、言語に基づいた知識や事実についての宣言的記憶の一種
感覚記憶:景色、音、味などの短い感覚的な出来事を貯蔵するもの
短期記憶(STM):忘れられたり保存されたりする前の約7つの情報や、取り出されて使用されている情報を保持する
貯蔵:情報の永久的な記録を作成すること
被暗示性:外部の源からの誤った情報により、虚偽記憶が作られてしまう効果
一時性:使われていない記憶が時間の経過とともに薄れてしまうような記憶の誤り
視覚的符号化:画像の入力
この章のまとめ
8.1 記憶の仕組み
記憶とは、私たちが学んだことを将来に使用するために保存するシステムやプロセスのことです。
私たちの記憶には、情報の符号化、貯蔵、検索という3つの基本的な機能があります。符号化とは、自動処理または労力を要する処理によって情報を記憶システムに取り込む行為のことです。貯蔵とは、情報を保持することであり、検索とは、貯蔵庫から情報を取り出し、再生、再認、および再学習を通じて、意識的に認識することです。情報が3つの記憶システムを通じて処理されるという考え方は、アトキンソン-シフリンの記憶モデルと呼ばれています。まず、環境からの刺激が、1秒未満から数秒の期間だけ私たちの感覚記憶に入ります。私たちが気づいて注意を払った刺激は、短期記憶に移ります。アトキンソン-シフリンモデルによれば、もし私たちがこの情報をリハーサルすると、それは長期記憶に移って永続的に保存されます。バドリーとヒッチのもののような他のモデルでは、短期記憶と長期記憶の間には、フィードバックループのようなものがあることを示唆しています。長期記憶は、実質的に無限の記憶容量を持ち、潜在記憶と顕在記憶に分けられます。
8.2 記憶をつかさどる脳の部位
カール・ラシュレーをはじめとする研究者や心理学者は、記憶の物理的な痕跡であるエングラムを探しています。ラシュレーはエングラムを発見しませんでしたが、彼は、記憶が特定の領域に保存されるのではなく、脳全体に分散していることを示唆しました。現在では、小脳、海馬、扁桃体という3つの脳領域が、さまざまな種類の記憶の処理と貯蔵において顕著な役割を果たしていることがわかっています。小脳の仕事は手続き的記憶を処理することです。海馬は新しい記憶が符号化される場所です。扁桃体はどの記憶を保存するかを決定するのを助けるとともに、出来事に対する私たちの感情の反応が強いか弱いかに基づいて記憶の保存先を決定する役割を果たしています。強い感情的経験は、記憶を強化する神経伝達物質やホルモンの放出の引き金を引くため、感情的な出来事の記憶はそうでない出来事の記憶よりも強くなるのが普通です。このことは、フラッシュバルブ記憶現象として知られるものによって示されています:フラッシュバルブ記憶現象とは、私たちが人生の重要な出来事を記憶する能力のことです。しかしながら、人生の出来事に関する私たちの記憶(自伝的記憶)は、常に正確というわけではありません。
8.3 記憶の問題点
私たちは誰でも、自分の記憶が間違っていたときに、がっかりしたり、イライラしたり、恥ずかしい思いをしたことがあります。私たちの記憶は柔軟性に富み、多くの誤りを犯しやすいです。これが、目撃者の証言が概して信用できないことの理由です。忘却が起こる理由はいくつかあります。脳に外傷や病気がある場合は、忘却は健忘症のせいであることがあります。私たちが忘却する別の理由は、符号化の失敗によるものです。そもそも私たちが記憶の中に貯蔵しなかったならば、私たちは思い出すことはできません。シャクターは、忘却に寄与する7つの記憶の誤りを提示しています。情報が実際に記憶の中に保存されていても、干渉のせいで私たちがアクセスできないことがあります。順向干渉は、古い情報が新しく学んだ情報の想起を妨げる場合に起こります。逆向干渉は、最近学んだ情報が古い情報の想起を妨げる場合に起こります。
8.4 記憶力を高めるための方法
私たちの記憶システムにおける避けられない失敗に対処する方法はたくさんあります。日常的な状況の中で使うことのできる一般的な戦略には、記憶法、リハーサル、自己参照、および十分な睡眠が含まれます。また、これらの戦略は、あなたがより効率的に勉強するのにも役立ちます。
レビュー問題
1.________は、音韻ループ、視空間スケッチパッド、エピソードバッファ、および中央実行系を備えた記憶の貯蔵庫です。
a.感覚記憶
b.エピソード記憶
c.作業記憶
d.潜在記憶
2.長期記憶の記憶容量は、________です。
a.1つまたは2つの情報
b.7つ、プラスマイナス2つ
c.限定的
d.本質的に無制限
3.記憶の3つの機能とは、________です。
a.自動処理、労力を要する処理、および貯蔵
b.符号化、処理、および貯蔵
c.自動処理、労力を要する処理、および検索
d.符号化、貯蔵、および検索
4.この記憶の物理的な痕跡は、________として知られています。
a.エングラム
b.ラシュレー効果
c.ディーズ・ローディガー・マクダーモットのパラダイム
d.フラッシュバルブ記憶効果
5.重要な出来事についての例外的にはっきりした記憶は、________です。
a.エングラム
b.覚醒理論
c.フラッシュバルブ記憶
d.等能力性仮説
6.________は、過去の記憶の回想が自己強化的に行われることです。
a.ステレオタイプ・バイアス
b.自己中心的バイアス
c.後知恵バイアス
d.強化バイアス
7.TOT(tip-of-the-tongue:舌の先まで出かかっている)現象は、________としても知られています。
a.持続
b.誤帰属
c.一時性
d.阻害
8.新しい記憶を形成することを(1)________と呼ぶことがあり、古い記憶を呼び起こすプロセスを(2)________と呼びます。
a.(1)構成、(2)再構成
b.(1)再構成、(2)構成
c.(1)生産、(2)再生産
d.(1)再生産、(2)生産
9.あなたがピアノの弾き方を習っているとき、「Every good boy does fine.(よい男の子たちは皆うまくやる)」という文は、ト音記号の楽譜の線上の音符E、G、B、D、Fを覚えるのに役立ちます。これは、________の例です。
a.ジングル
b.頭字語
c.アクロスティック
d.音響
10.余語と藤原(Yogo & Fujihara, 2008)の研究によると、もしあなたが短期記憶を向上させたいのであれば、________について書くことに時間を割くべきです。
a.将来のあり得る最高の自分自身
b.トラウマになるような人生経験
c.些細な話題
d.自分の食料品リスト
11.自己参照効果とは、________ことです。
a.記憶しようとしている内容を、自分にとって個人的に意味のあるものにする
b.記憶しようとしている単語の最初の文字をすべて使って文章を作る
c.記憶しようとしているそれぞれの単語の最初の文字で形成された単語を作る
d.記憶しようとしている単語を自分で声に出してみる
12.符号化のために情報を整理するのに役立つ記憶の補助手段は、________です。
a.記憶法
b.記憶を高める戦略
c.精緻化リハーサル
d.労力を要する処理
批判的思考の問題
13.潜在記憶と顕在記憶を比較対照してください。
14.アトキンソン-シフリンのモデルに基づき、記憶の3つの段階を挙げて、説明してください。
15.私たちが情報を符号化する2つの方法を比較対照してください。
16.もしあなたが海馬に損傷を受けた場合、あなたの記憶システムには何が起きるでしょうか?
17.2種類の干渉を比較対照してください。
18.2種類の健忘症を比較対照してください。
19.自己参照効果とは何ですか?また、自己参照効果はどのように勉強の効率を上げるのに役立ちますか?
20.あなたとあなたのルームメイトは、昨夜ずっと心理学のテストのために勉強していました。あなたはその内容を理解していると思っていますが、翌朝、テストの1時間前にもう一度勉強することを提案します。あなたのルームメイトは、なぜそれが良いアイデアだと思うのか説明してほしいと言います。あなたは彼女に何と答えますか?
個人的に当てはめてみる問題
21.あなたが今までに学んだことで、あなたの手続き的記憶に入っていることを記述してください。その情報をどのようにして学んだかを論じてください。
22.あなたが高校時代に学んだことで、現在は意味記憶になっていることを記述してください。
23.あなたの人生における重要な出来事についてのフラッシュバルブ記憶を記述してください。
24.シャクターが提示した7つの記憶の誤りのうち、あなたが犯したことのあるものはどれですか?それぞれの例を挙げてください。
25.陪審員は、目撃者の証言に大きな比重を置きます。あなたが、コンビニエンスストア強盗の容疑をかけられている被告の弁護人だとします。何人かの目撃者があなたの依頼人に不利な証言をするために呼ばれています。目撃者の証言の信頼性について、あなたは陪審員にどのように説明しますか?
26.この章に出てきた用語や概念を覚えるのに役立つ記憶法を作ってください。
27.あなたが使ったことのある効果的な勉強テクニックは何ですか?それはこの章で提案された戦略とどのように似ていたり、違っていたりしますか?
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