付録4 私たちの意思決定の枠組み
世界に違いを生みだすような、充実したキャリアを見つけるには、私たちは選択肢の中に何を求めるべきなのでしょうか?私たちの4部構成のキャリア枠組みを使って、選択肢を比較する方法を説明します。
私たちはどのようにしてさまざまなキャリアを比較するのか?
短期的なインパクト
まず、あなたのインパクトについて、短期的な観点からだけ考慮することから初めてみましょう。それは、2つの要素に分けることができます:
役割インパクト - その役割が、大きなソーシャルインパクトを生み出す機会をどの程度あなたに与えるか。
個人的な適性 - あなたが、そのような機会をどの程度活用することができるか。
私たちは、この2つの要素はほぼ掛け算になると考えています。つまり、もしあなたが役割に2倍優れていれば、全体的なインパクトも2倍になるということです。
長期的なインパクト
しかしながら、私たちは、あなたが長期的なインパクトを与える潜在能力も重視しています。これも2つの要素に分けられます:
キャリア資本 - その役割が、将来インパクトを生み出すのにより良い立場にいる機会をどの程度あなたに与えるか。
個人的な適性 - あなたが、そのような機会をどの程度活用することができるか。
個人的な満足度
ここまで、ソーシャルインパクトについて述べてきましたが、あなたの個人的な満足度についてはどうでしょうか?仕事が楽しくなければ燃え尽きる可能性が高いため、長期的なソーシャルインパクトのためには仕事の満足度が重要であることを私たちは知っています。
第1章で述べたように、もし自分が得意としており、さらに他の人を助けるような仕事をあなたが見つけることができれば、あなたはすでに充実したキャリアへ向けて大きく踏み出しているはずです。キャリア資本の獲得は、個人の成功や成長にとっても重要です。
しかしながら、すでに列挙したこれらの要素だけではカバーしきれない、仕事の満足度といういくらかの追加の要素があります。そこには、あなたが熱中するような没頭できる仕事を得ること、好きな人と働けること、給与や労働時間などの基本的なニーズが満たされている仕事、そして、その仕事が人生の他の部分と調和していること、などが含まれます。これらをカバーするために、私たちは「支えてくれる環境」を別要素として加え、その下にこれらの事項をすべて含めています。
仕事の満足度から役割インパクトと個人的な適性をくくりだすと、私たちは、すべての要素について、次のように書くことができます:
これらの要素をどのように重み付けすればよいのか?
ここでは、さまざまな要素を互いにバランスさせるためのヒントをいくつか紹介します:
もしあなたがまだキャリアの初期にいるならば、自分へ投資する良い機会をたくさん見つけられるはずなので、役割インパクトよりもキャリア資本を重視するのがベストです。もしあなたがキャリアの後半にいるのであれば、キャリア資本をあまり重視せず、今すぐインパクトを与えることに重きを置くとよいでしょう。とはいえ、キャリア資本をどの程度重視するかは、あなたが注力したい問題の緊急性にもよります。
長期的に見て自分が何をするかが不確実であるほど、狭いキャリア資本よりも柔軟なキャリア資本を優先させるべきです。柔軟なキャリア資本とは、さまざまな役割で役に立つキャリア資本のことです。
利他的志向が強いほど、他の要素に比べて支えてくれる環境に重きを置く必要が少なくなります。
個人的な適性は、他のすべての要素を向上させることができるため、最も重要な要素である可能性があることを心に留めておいてください。
探索の価値
キャリアの決定は不確実性が高いため、多くの場合、自分の選択肢について詳しく知ることが最も価値あることです。そうすれば、長い目で見て、より良い意思決定ができるようになるでしょう。
これは、ある選択肢を単なる実験として手に取ってみる価値がある場合もある、ということを意味します。そのため、私たちは以前にこの枠組みに「探索の価値」を加えることもありました。現在では、これは少しわかりにくいと考え、削除しました(その代わり、第6章のアドバイスに織り込みました)。しかしながら、この考え方自体は今でも正しいと考えています。しばしば、最も重要なことは、多くの選択肢を試してみることです。
この枠組みの使い方
どの仕事が自分にとって最適かを見つけ出すとき、私たちは、前もってすべてを把握しようとするのではなく、さまざまな選択肢を調査し、試してみることを大いに支持します。しかしながら、あなたはおそらく調査する時間が限られているので、最初に選択肢を排除する方法が必要でしょう。
また、調査しても結論が出ない場合は、最終的に、選抜候補となった選択肢をそれぞれ徹底的に評価する必要があります。
まずは、直感を用いて当初の順位をつけることから始めるとよいでしょう。
そして、次のような観点で選択肢を評価します:
- 個人的な適性
- 役割インパクト
- キャリア資本
- 仕事の満足度
- 上記に含まれないその他の個人的要素
もしあなたが最初の切り捨てを行うだけであれば、いずれかの要素が非常に悪いか、または他の選択肢に支配される(つまり、すべての要素で他の選択肢よりも悪いか同等である)ようなものを除外してください。
より詳細な評価を行う場合は、通常、これらの要素のそれぞれについて、選択肢に1~5で点数をつけると役に立ちます。これによって、明確な勝者が見つかるかもしれません。そうでない場合でも、選択肢についてより深く考え、他の人からフィードバックを得るのに役立ちます(他の人にあなたの採点を見せ、自分が間違いを犯していないか聞いてみましょう)。
あなたの特定の決定にとって最も重要な要素に評価を集中することを心に留めておいてください。これは、リストを削減し、より具体的にすることを意味するかもしれません。
また、すべての点数を合計し、それに基づいて選択肢をランク付けすることができます。この方法は、単に直感的にどの選択肢がベストか決定するよりも、より正確だと思われる根拠があります。とはいえ、やみくもに合計点数で判断するのはやめましょう。もしあなたの直感が「この結果は間違っている」と告げるなら、その理由を考えてみてください。状況によっては、意識的な推論よりも直感のほうが正確な場合もありますし(例えば、社会的な状況に関して)、分析的な思考のほうが正確な場合もあります。
精度を上げるには、それぞれの点数を順番に見て、「これが間違っているとしたら、なぜか?」と自分に問いかけたり、友人に対してそれが正当であると説明してみたりしてください。
それぞれの要素を評価するための質問
それぞれの要素を評価する際に考慮すべきいくつかの質問を以下に示します。
個人的な適性
まず、この分野で成功する人の典型的な確率(基準率)を計算することから始めましょう。次に、自分が平均よりも成功する確率が高いか低いかを尋ねます。
この分野で成功するための最良の予測因子は何でしょうか?自分に当てはまるものはあるでしょうか?
この道は、あなたの最も価値あるキャリア資本を活用するものですか?その道は、あなたの特別な強みを活かせますか?
もし、あなたが1年か2年の間、完全に失敗したとしたら、それを持ちこたえることを容易に想像できますか?
役割インパクト
私たちは通常、これを次のような質問に分けて考えます(インパクトの大きさは、この2つを掛け合わせたものに比例します):
- その問題はどの程度差し迫ったものか?これは、さらに次のように分けることができます:
- その問題は規模が大きいか?
- その問題は他の人によって軽視されているか?
- どのようにして進歩を遂げることができるか?
- その問題に対して、自分はどの程度の大きさの貢献ができるか?これは、さらに次のように分けることができます:
- 自分の直接的な仕事を通じた貢献
- 自分の寄付を通じた貢献
- 自分の立場を利用するアドボカシーを通じた貢献
その他に考慮すべき目安は以下の通りです:
自分がどの問題に取り組むかについて、柔軟性があるか?
大きな影響を与えた人たちは、過去にこの道を歩んできたか?
人々は悪い理由のためにこの道を軽視しているのか?
影響力のあるキャリアの4つのタイプのリストについては、第4章を参照してください。
キャリア資本
これは以下のように分けることができます:
スキル - この仕事であなたは何を学ぶでしょうか?スキルは、転用可能なスキル、知識、および性格特性に分けることができます。良い指導を受けられる仕事では、最も早く学ぶことができます。
人脈 - この仕事であなたは誰と働き、誰に出会うでしょうか?影響力があり、ソーシャルインパクトに関心のある人とつながりを持つことが重要です。
資格 - この仕事は、将来の協力者や雇用主に対して良いシグナルとして機能するでしょうか?ここでいう資格とは、法律の学位を持っているというような正式なものだけを意味しているのではなく、あなたの実績や評判も含まれることに注意してください。もしあなたがライターであれば、それはブログの質ということになりますし、もしあなたがコーダーであれば、GitHubがそれにあたります。
ランウェイ - この仕事であなたはどれだけのお金を貯めることができるでしょうか?ランウェイとは、無収入でも快適に生活できる期間のことです。経済的な安定を維持するために、少なくとも6か月のランウェイを目指すことをお勧めします。12~18か月のランウェイがあれば、大きなキャリアの変化にも柔軟に対応できるため、さらに有効です。
そして、以下のことを考慮するのを忘れないでください:
このキャリア資本は、中期的な目標に向かうためにどの程度有効なのか?
このキャリア資本はどの程度柔軟なのか?将来の多くの仕事で役に立つか?
キャリア資本の良い選択肢のリストについては、第5章を参照してください。
支えてくれる環境
これは以下のように分けることができます:
(インパクトと個人的な適性 - 上記ですでに取り上げました)
没頭できる仕事 - あなたは働き方を自由に決められますか?明確なタスクがありますか?明確なフィードバックがありますか?やることは多様ですか?
同僚 - あなたは同僚を好きになれますか?同僚はあなたを支えてくれますか?
基本的なニーズ - あなたは十分な収入が得られますか?勤務時間は適切ですか?通勤時間は適切ですか?
人生の他の部分との調和 - あなたは個人的な関係性を向上させることができますか?他の大切な個人的な優先事項を守れますか?
仕事の満足度については、第1章をお読みください。